「歌」 #12
去年の合唱コンクール。
500人の視線が集まる体育館のステージの前で。
私は指揮をした。
震える足、固まる指先、そしてあなたと絡む視線。
そのとき私の心拍数があがったのは、きっと緊張のせいだけではないだろう。
なんとか動かした指先が、みんなに歌を紡がせる。
ソプラノの主旋律、男声の裏拍。
それからアルトの、いや、あなたのハーモニー。
もっとあなたの声に集中したかった。けれど、そうするには少し邪魔が多かった。
だから今度は、私と二人きりで歌ってほしい。
あなたで満たされたいから。
君の隣にいたいから。
5/24/2025, 11:25:56 AM