君が顔を真っ赤にして言った「大嫌い」
君が口を緩ませて呟いた「そんなんじゃねえよ」
君が目を細めて放った「可愛くねえなお前」
君がそっぽを向いてぼやいた「うるせえブス」
君の言葉は動作や表情と一致していない
動作や表情は私に対して好意的なのに
言葉はまるで突き放すかのように棘がある
愛情の裏返し、と言うヤツなのだろうか
周りの皆も私もいい加減気がついている
でも君だけ気がつかれているとは知らず
今日も私に棘を刺した
どんなに嘘で中身のない言葉でも
君の言葉で傷ついた私が君を好きになるなんて
世の中そんなに甘くないと次会ったら言おう
『裏返し』
「お前ほんと鳥頭!」
「え、わかる? よく鳥顔って言われるんだ!」
「ちっげえーよ! ていうか鳥顔って何だよ聞いたことねえよ!」
『鳥のように』
「ありがとう」と「ごめんなさい」を散々言って
どうやって話を切り上げようか迷っているうちに
だんだん気まずくなっていく空気の中
「またね」
会えるかどうかは分からないけど
会いたくない人には絶対言わない言葉
『さよならと言う前に』
コントラストの激しい青空と大きなわた雲から
少しトーンを落とした青空とわたを千切った雲へ
そろそろ秋支度なのかな
『空模様』
「鏡よ鏡。世界で一番美しい人は誰?」
「わからない」
「この世界でもっとも美しい人よ。本当にわからない?」
「はい」
「おかしいわね。本当に美しい人を思い浮かべている?」
「はい」
「ほら、思い浮かべているんじゃない。それは人でしょう?」
「はい」
「男性ですか?」
「部分的にそう」
「部分的にそう!? まぁ今は多様性の時代らしいから性別は問わないのかも」
「はい」
「じゃあその人は私と会ったことがある?」
「多分違う」
「会ったかどうかは把握してない、と。なら私とは似たところがある?」
「いいえ」
「私とは対極に位置する美人。それなら交わらないのも納得かも」
「はい」
「でも全然分からないわ、降参。一体誰を思い浮かべていたの?」
「あなたの想像する人物です」
「名を出せって言ってるの!!」
ガシャン
『鏡』