7/1/2025, 3:04:55 PM
『夏の匂い』
部屋の扉を開けたその瞬間。
呼吸するだけで喉がひりひりするような熱と、背中に感じるじわっと蒸した湿度。抜けていく風すら熱波のように感じられる、まさしく灼熱の季節だけど。
この、自分が今から弾けるポップコーンにでもなりそうな暑さにならないと感じることの出来ないワクワク感。
ただの暑い日。でも、何かが始まりそうな冒険心をくすぐる香り。なんとなくそう思わせるのは、やっぱり幼少期の思い出が大きいのかもしれない。
なんて思いながら、今日も快適なエアコンの効いた部屋に背を向けて、眩しい日差しの中へと踏み出すのだった。
9/21/2024, 2:17:58 PM
大事にしたい。
傷つけたくなんてないし、辛い思いもしてほしくない。
いっとう大切に、宝物のように扱わないと。
そう思っていたはずなのに。
か細い声を上げる君を見て、ふつふつと別の感情がわいてくる。
あぁ、そうだったのか。
宝石は砕けた後も美しい。
9/19/2024, 1:14:20 PM
君と出会ってからは、早く大人になりたい。
そう思うことのほうが多くなった。
早く大人になって、自立をして。
そうすればきっと、君との将来を誓い合えると思ったから。
そう思っていたはずなのに。
「しばらく、会えなくなるね」
まさか自分達の将来のために、君が海を越えてしまうなんて。
いや、君の夢のことを知っていたのだから、薄々分かってはいたけれど。それでも、やっぱり、寂しい気持ちは変わらない。
あぁ。
子供のままでいいから、ずっとこのまま君のそばにいられたらいいのに。今だけ、時間が止まってくれたら。
にこりと微笑む君がゲートの向こうで小さく手を振る姿を見つめながら、覚悟を決めきれない幼い僕はぎこちない笑顔を向けることしか出来なかった。