【紅茶の香り】
「お茶頂いてます。仕事はどうしたかって?サ、サボっていません!僕はご厚意に甘えているだけです。一般の方は労ってくださる事が多いので」
祖母のティータイムに付き合うと長いぞと目の前のサイバーチックな衣装の女郵便屋に囁いた。他の郵便屋という者を見た事をないのだか区画の問題なのだろうかね。それに一般じゃない輩も相手にしているのか。深くは聞きたくはないが。
「クッキー美味しいです。おばあ様は天才的ですね」
祖母の近くには女の子がいない。息子は俺と兄。孫も三人いるが全員男。俺は大昔に妻に先立たれた。だから、毎日来てくれる女郵便屋が可愛らしくて仕方無いのだろう。郵便屋が来る理由も兄からの手紙を届ける為。義姉の療養の付き添いで遠くにいる。
「うちは女の子が皆、先立つ家系なの。私は夫の二番目の妻だから許されているのかも知れないけれど。ごめんなさいね。こんな老体の寂しさを埋める為だけに付き合ってくれて」
「いえいえ、お気になさらず。僕は僕を良くしてくれる人の味方です」
存外大人しいかと思ったら図太いな。と思った。そんな性格だから生き残れているのかもとも思えた。
「あ、そろそろ行きます。明日もきっとお手紙来ますよ。では、失礼します」
俺達に手を振ってから一跳躍で姿が消える。どんな超技術使ってるんだ。凄いもんだね。郵便屋。この前は大岩を砕いたともいうし。まさか、人間じゃないとかないよな?そんな考えは祖母が幸せそうにしているうちに封印した。
【愛言葉】
こんな時だけ恋人面ですか。そんなに愛を囁いて欲しいですか。お断りですね。常に長袖着てないといけない身体にしておいて。顔だけは傷付けずに見えない所に。やり口が汚いんですよね。普段は頭悪い癖に。無駄な所で頭使わないで普段の生活に頭使って欲しいものです。依存しないでくださいってお話です。ご理解いただけてますか?
【友達】
ソイツとは高校から出会った。何故か幼少期の頃の話はよく覚えていないで返される。幼馴染みとかいないのか?程度の雑談なのだが。俺には強烈な幼馴染みがいたから聞きたいだけだったんだが。ソイツはぼんやりしてる囓る程度にオカルト好き程度の普通の奴。それが夏休み明けには屋上から身投げするんじゃないかという迫真の表情をしていた。それに突然泣き出したり、人と距離を取りたがったりと変わった。何故?と聞きたかったがあの顔が、空気感がそれを許さない。友達だと思ってたが相談してくれない所を見るに信頼に足らないようだ。そうじゃないという表情も見せてくるがそれ以上、何も言えずに去っていく。なぁ、俺達はいつになったら元に戻れるんだ?
【行かないで】
先輩は俺より早足だったんだ。そんな真実は聞きたくない。あの時間を嘘だと、幻覚だとでもいいたいのか。黙れ。時代は違ったかもしれないが。会うべき存在じゃなくても俺は…あの人を…先輩を慕ってる。この心に偽りはない。血が絆を表してる。だから、俺は未来を守りたい。今はまだ過去にすがるだけの子供でしかないが未来を掴んでみせる。
【どこまでも続く青い空】
絵本の中ではこの檻の外の空はどこまでも続いていると書かれていました。海というものもどこまでも広いそうです。でも、私にはそれを知る術はありません。何故ならここから出る事をご主人様が許してくれないからです。なので、本を読んで憧れを抱きます。次に生まれ変わるのならば自由な風になりたいです。