闇の精霊

Open App

【紅茶の香り】
「お茶頂いてます。仕事はどうしたかって?サ、サボっていません!僕はご厚意に甘えているだけです。一般の方は労ってくださる事が多いので」
祖母のティータイムに付き合うと長いぞと目の前のサイバーチックな衣装の女郵便屋に囁いた。他の郵便屋という者を見た事をないのだか区画の問題なのだろうかね。それに一般じゃない輩も相手にしているのか。深くは聞きたくはないが。
「クッキー美味しいです。おばあ様は天才的ですね」
祖母の近くには女の子がいない。息子は俺と兄。孫も三人いるが全員男。俺は大昔に妻に先立たれた。だから、毎日来てくれる女郵便屋が可愛らしくて仕方無いのだろう。郵便屋が来る理由も兄からの手紙を届ける為。義姉の療養の付き添いで遠くにいる。
「うちは女の子が皆、先立つ家系なの。私は夫の二番目の妻だから許されているのかも知れないけれど。ごめんなさいね。こんな老体の寂しさを埋める為だけに付き合ってくれて」
「いえいえ、お気になさらず。僕は僕を良くしてくれる人の味方です」
存外大人しいかと思ったら図太いな。と思った。そんな性格だから生き残れているのかもとも思えた。
「あ、そろそろ行きます。明日もきっとお手紙来ますよ。では、失礼します」
俺達に手を振ってから一跳躍で姿が消える。どんな超技術使ってるんだ。凄いもんだね。郵便屋。この前は大岩を砕いたともいうし。まさか、人間じゃないとかないよな?そんな考えは祖母が幸せそうにしているうちに封印した。

10/27/2024, 11:51:08 AM