闇の精霊

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9/29/2024, 11:29:28 AM

【静寂に包まれた部屋】
椅子に括り付けられた両手首。口にガムテープ。両足首にロープ。空調の音しか聞こえない無機質な真っ白な部屋。デスゲームをするにしても人がいないし、モニターもない。スピーカーも監視カメラもない。何がしたいんだか。俺は御曹司でもなければ主要人物でもないし顔もよろしくない。本当に面白味のない一般人だ。それにこんな真似をしてくるとはとんだ変態だと思う。ストーカー?女の気配もないよ。男?部活の先輩と顧問ぐらい。正直、訳が分からないが暴れる気概もない。何がしたいんだろうなコイツ。夢だと思いたいが両手首と両足首の締め付けが現実を突き付ける。離してくれ。狙いは何だ。俺をどうしたい。

何時間経ったか。足先の感覚がない。マトモに座っていられない。船を漕ぐ様に身体が前後に揺らぐ。意識を手離すのに時間は掛からなかった。助けてくれ。一番最初に出てきそうなこの単語だけは最後まで出てこなかった。希死念慮?そんなもんないよ。ただ…目的が知りたい。それだけを思って白の部屋から黒の意識の底へ沈んでいった。

9/28/2024, 12:57:09 PM

【別れ際に】
「おはようございます。お届け物です」
控え目な性格の顔馴染みの郵便屋さんがいつも通り手紙を届けてくれる。馬車が当たり前に移動や輸送手段としている中で機械的な装備の彼女は異端といえば異端だ。
「若いのに偉いわねぇ」
「偉いですかね?僕は…その…このお仕事を楽しんでやらせてもらっているので。あ!でも大切という意味では偉いですね」
困り眉でオッドアイの彼女はとても可愛らしい。だが、彼女は強い子だ。この辺境でさえも危険な世界で郵便屋として駆け回れるのだから。
「?どうされました?」
「頑張ってるわねぇって思っただけよ」
「褒められると嬉しいです。えへへ。それでは行きますね」
走る姿勢になった彼女を引き留める。
「ちょっと待って」
「ほぁ?何か不備でも?」
家に戻って、手紙を置き、クッキーを数枚小袋に包んで次の配達先を確認している彼女に手渡す。
「あ!お気遣いありがとうございます…嬉しいなぁ…」
「喜んでくれて嬉しいわ。お口に合うか不安だけれども」
「好き嫌いなんてないのでご安心を。美味しく頂きます。では!」
あっという間に駆け出した彼女はもう姿が見えない。人間なのよね?不思議な郵便屋さんを見送った私は微笑んで家へ戻った。

9/28/2024, 7:54:48 AM

【通り雨】
やっば!傘持ってない、と思った時には時既に遅し。雨にやられてずぶ濡れだ。折り畳み傘って言う程雨を防げない上に風に弱くてポッキリいくから困り者である。コンビニでビニール傘でも買えばいいと思うがここはド田舎。通学路にコンビニなんてない。熱いシャワー浴びたいと荷物確認しなきゃなという気持ちでげんなりしながら走って帰る。カッパでも持ち歩こうかな。

9/28/2024, 7:50:41 AM

【今日の心模様】
夢中になってるとやる事忘れる事あるよね。それだよ。凹んじゃいないがやらかしたぁ感はある。でも、毎日投稿してた投稿者がお休みいただく期間だってあるじゃない。それと同じって事にしてる。凹んでたって進まないもの。ま、言い訳だけが一丁前のろくでなしになってる事は否定しないよ。ん?なんで忘れてたかって?勉強してたからだよ。後の為の勉強。な?責められないだろ。そもそも、大事ではあるけど仕事関係じゃないから別にいいじゃないの。はい、ろくでなしポイントプラス。うーん、何言ってもダメダメですな。

9/26/2024, 11:16:01 AM

【秋】
「もう肉まん売ってる。まあ、暑かろうが秋か。すみません、肉まん…お前いる?」
「あ、くれ」
「おけ。二つください」
何の変哲もないやり取りをへて、近くの公園に向かう。座る場所が欲しい。それに友人と話している時間は楽しい。他愛もないオチもない。取り留めのないやり取りをして公園のベンチで缶ジュースを開ける。
「なあ」
「おん?」
「ペットボトル飲料多過ぎてさー。缶飲料って自販機でしか見なくね?アルコール以外の奴」
「わっかるー。変な飲み物ハンターの俺はちょいちょい自販機探して飲んでるからよく分かるわ」
「スーパーの方がヘンテコ飲みもん多くね?」
「自販機はメーカーが売りたいもん出してるから結構変なのあるぞ。おでん缶をコンビニで見た事あんのかー?」
「ないない。自販機も色々あるよな。餃子、ピザ、ラーメン。便利だねー」
「おもろい。日常のヘンテコ探しは楽しい。陰謀論の5000倍おもろい」
「そうかー。でもまあ、アルミホイルを頭に巻く趣味ないわー。うるさいしあれ」
「やったんかい」
「動画でアルミホイル帽子作り見ててうわーうるせーってなっただけだよ。意味分からんよなあれ」
「電波で頭やられるなら文通してろってのー」
「手紙はいいぞ。入院してるアイツとやり取りしてる」
「は!?ずる!」
友人に肉まんを顔に押し付けられる。
「あつっう!何すんだ!」
「女とやり取りしてんじゃねー!できてんのか!」
「いや、友人ですが何か。つーか、幼馴染だし」
「不純異性交遊でサークル解散な」
「俺とお前だけじゃねーか。そもそも何のサークルだコラ」
「魔法使いになる男サークル」
「滅べ」
「あぁん?純潔守っちゃいけんのか」
「俺は普通に人生送るぞ。だが、彼女はアイツじゃない」
「文通してんのにお前が?脈なし?かー男かそれで!」
「アイツは俺なんかに好意なんざ抱いてねぇっての」
「ムカつく。俺もちょくちょく顔見せに行ってたのにそんな話聞いてない。ジェラー!ジェラシー!」
「些細な事を話すまでもないだけだろ。ちなみに明日にゃ退院らしい」
「お!良かったじゃん。入院なんていうから焦ったが大した事なくて良かった。予定開けておくから迎えに行こうぜ」
「喜ぶだろうな。無論、俺も付き合う。そういう予定だったし」
暫し、無言が続いてから友人が口を開く。
「秋でも青春。ええですなぁ」
「だから、そういうのじゃない。秋恋なんて言葉はあるが何もねぇよ」
「はー…さいでっか」
露骨につまらなそうにする友人の頬に冷たさも欲しくて買った氷菓を突き付ける。
「つめってぇ!」
「お返しだ」
こうやって男と馬鹿やってる方が楽しいと思える俺は本当に女心なんぞ分かってない朴念仁なのかも知れないがどう言われようとアイツに恋心なんてないと思ってる。幼馴染同士で仲良くなって付き合うなんて恋愛映画かラブコメでしかない。作り物だろ。リアルじゃない。俺はそう思ってるよ。

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