闇の精霊

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【別れ際に】
「おはようございます。お届け物です」
控え目な性格の顔馴染みの郵便屋さんがいつも通り手紙を届けてくれる。馬車が当たり前に移動や輸送手段としている中で機械的な装備の彼女は異端といえば異端だ。
「若いのに偉いわねぇ」
「偉いですかね?僕は…その…このお仕事を楽しんでやらせてもらっているので。あ!でも大切という意味では偉いですね」
困り眉でオッドアイの彼女はとても可愛らしい。だが、彼女は強い子だ。この辺境でさえも危険な世界で郵便屋として駆け回れるのだから。
「?どうされました?」
「頑張ってるわねぇって思っただけよ」
「褒められると嬉しいです。えへへ。それでは行きますね」
走る姿勢になった彼女を引き留める。
「ちょっと待って」
「ほぁ?何か不備でも?」
家に戻って、手紙を置き、クッキーを数枚小袋に包んで次の配達先を確認している彼女に手渡す。
「あ!お気遣いありがとうございます…嬉しいなぁ…」
「喜んでくれて嬉しいわ。お口に合うか不安だけれども」
「好き嫌いなんてないのでご安心を。美味しく頂きます。では!」
あっという間に駆け出した彼女はもう姿が見えない。人間なのよね?不思議な郵便屋さんを見送った私は微笑んで家へ戻った。

9/28/2024, 12:57:09 PM