【些細な事でも】
こういう事言いたくないんだけどもう限界だから言うね。お会計終わった後に店員さんの評価付けするの止めて。可愛かったとか好みの顔じゃないとか何様なの?あとは、立ってる時に足を組んで格好付けるとか。正直キモい。それと、メロンソーダの発音どうなってるの。メ!ロンソーダ
って。はぁ、くだらねぇ些細な事だろ?塵も積もれば山となる。そういう事よ。
【心の灯火】
「お疲れ様です」そう言って僕は会釈をして会社を後にする。上司からの叱咤、同僚の陰口に妬み、使えない後輩。あぁ、イライラする。人が殆どいない電車に揺られて、人気のない道を行く。疲労困憊の身体にはこんな当たり前の事すら辛い。だが、僕は一度も折れた事はない。何故なら大切な人がいるから。誰にも知られていない唯一の人。ね、僕だけの灯火ちゃん。怯えた目も素敵だよ
【開けないLINE】
ピロン♪ピロン♪ピロン♪軽快な通知音が一人きりの部屋に響いている。誰か止めてくれ。スマホを放り投げ、枕で耳を塞ぐ。未読が99+のLINE。相手は最近別れた彼女。別れた理由は僕と付き合うと彼女が不幸になるからと思ったから。こんな甲斐性もなければ男としての価値もない普遍男なんて、と思っていたのに。「好きだよ」「大好きなんだよ」「見捨てないで」そんな言葉が永遠と並んでいる。あぁ、夢なら覚めてくれ。
【不完全な僕】
人の期待に応えようとするのは当たり前。そう信じて生きてきた。でも、ある時、言われたんだ。「君って自分の為に生きてないよね。それって生きてるの?」分からない。どれだけ頑張っても認められない僕にそんな事を問われても分からない。分かる筈がないんだ。そして、今日もまた問われる。「ねぇ、君って生きてるの?」
【香水】
数百の貌がごった返すショッピングモール。外の暑さから逃げてきたそれらからは貌と同じぐらい多種多様な香りがする。煙草、キツい汗の匂い、インク、コーヒー。フードコートでもないのに食べ物の香りがするのは食べ歩きだろう。その人間臭さが溢れる空間でふわりとした高貴なのに蟲惑的な香りが鼻を撫でた。辺りを見渡すも主は見えない。香りから人物を想像してみる。きっと、真っ白な女優帽に真っ白なロングワンピースが似合う黒髪美人でたおやか。あぁ、美しい。そんな妄想を膨らませながら身体は現実の人混みの中へ消えていく。