向かい合わせ
「あの同窓会で
あなたと私はたまたま向かい合わせになったやん?
その時ね、私思ったのよ。
多分私はこの人と家族になるわって。」
そう言いながら、向かいに座る妻は
僕の作ったハンバーグを頬張っている。
僕はいつものように間抜けな顔で
「ふーーん」と相槌を打つ。
…僕も思ったよ。
そんな事は恥ずかしいから言わない。
やるせない気持ち
あの夜、父が傷害事件を起こした。
酔った父は偶々店にいた見ず知らずの男性に殴りかかったのだ。
父はそのまま警察に連行されていった。
次の日から俺の生活は一変した。
友達からは白い目で見られた。
近所の人の冷たい視線が痛かった。
バイト先はクビになった。
俺は父を憎んだ。
俺自身は何も悪いことなんてしてないのに。
俺に父と同じ血が流れていると考えると恐ろしい。
だけど、
心のどこかで父のことが好きなままの自分もいる。
憎しみの気持ちでいっぱいのはずなのに。
やるせない。
終点
今までの人生、
私はとにかく先を急ぐことしか考えてなかった。
まるで新幹線のように、
たくさんの駅を猛スピードですっとばして。
それはそれで充実してたけど、
通って来た道の景色を眺める余裕すらなかった。
だからこれからは、
各駅停車の在来線で
人生の終点までのんびりと進んでいきたい。
たまには途中下車もしながら。
太陽
「太陽みたいにみんなを照らす人」に憧れてて、
本当はネガティブ人間だけど
無理して明るく振る舞ってきた。
だけど、最近気づいたんだ。
みんなが太陽にならなくてもいいんじゃないか?って。
私たちが人間生活を送れているのは間違いなく太陽があるからなんだけど、太陽が二つも三つもあったら、
きっと暑すぎて死んでしまう。
人も同じ。
色んな惑星があるように、
色んな種類の人がいる。
ネガティブな人もいるし、静かな人もいる。
そういう人たちがいるからこそ、
太陽みたいな人が輝ける。
自分に自信持っていこう。
鐘の音
キーンコーンカーンコーン
あぁまた長い1日が始まった。
よりによって今日の1限は物理。
早く終わらないかな。
なんて当時の私は思っていた。
この何でもない1日が、時を経てかけがえのない思い出に形を変える事も知らずに。
大人になったら、制服を着る事も、
席替えで一喜一憂する事も、
あんなに全力で勉強をする事も、
お弁当を屋上で食べる事も、
長縄をありえないくらい飛ばされる事も、
クラスの色恋事情で盛り上がる事も、
友達との中身のない会話で爆笑する事も、
全部出来なくなるんだぞ。
青春の思い出って、
過ぎ去ってからやっとその尊さに気づくんだよな…
若かりし頃の私へ。
今を楽しめ!!