『善悪』
「こんなことしちゃダメ」
「大人はいいの」
「普通に考えたら分かるでしょ」
「口答えしないで」
否定して、自分たちの考えばっかり押し付けてくる
悪いことしたら怒鳴られて
良いことをしたら褒められる
悪いこと、良いこと、なんて誰が決めたの?
大人の物差しで僕らを図らないで
理由も知らずに頭ごなしに否定しないで
僕らにだって僕らなりの考えがある
やりたいことがある
締め付けられて生きて、あんたらの正しさで育って
あんたらみたいな大人になる、なんて
そんなのごめんだよ
『何もいらない』
君がいるなら、もうそれで良かったんだ
君がいてくれるなら
それだけあれば幸せだった
君がいないなら、他の何もかもが傍にあったって意味が無いから
本当に、何もいらなかったんだよ
君以外
『ここではない、どこかで』
足跡も残さず、雪のように溶けて消えてしまいたい
僕がそこにいたことも
僕を認識する皆の記憶も
僕の痕跡全てなくなればいい
そうしたらきっと、解放される
こんな泥沼みたいな、一度足を入れたら最後な地獄から
そして遠くへ行くんだ
もっと、ずっと遠くへ
どこでもいい、ここでなければ
ここではない、どこか遠くへ
『幸せに』
君がいなくなった時、もう無理だって思った。
もう、きっと僕は耐えられないって。
息も苦しくって、ご飯も喉を通らないで死んじゃうよって。
──でも
君がいなくなっても朝はやって来るし、
君がいなくなってもお腹は減る。
僕は思っていたより薄情みたい。
君がいない世界に慣れてしまえば、きっと僕は今まで通り
君に出会う前に戻るだけ。
君がいない生活は、案外なにも変わりゃしなかった。
君がいなくても、僕はきっと幸せになれるんだろうね。
息もできるしご飯も美味しい。夜はぐっすり眠れるし、色んなものに心が動く。
何も変わらない僕の世界には、
……君だけが、そこにいない。
ぽっかり空いた隙間から、本来君が収まっていたその空間から
『君との幸せ』だけが抜けちゃっただけ。
ただ、それだけ。
『ないものねだり』
綺麗な顔
美しい体
慎ましやかな性格に
余裕のある心
全部全部、僕にないものばかり
その艶やかな髪を
その涼やかな声を
その愛らしい笑い方を
その優しい家族を
ほんの少しだけでいいから、僕にくれても良かったのに
神様っていじわる
なんて、結局いつも
ないものねだり