「ダメだょ。ぼく、上手になんかできない!」
「いいのょ、上手くいかなくたって。」
ママはいつも、優しかった。
「上手くいかなくても、一生懸命やれば大丈夫よ」
そうだ。
一生懸命やればできなくてもいいんだ!
しようがないよ、がんばったんだから!
「先生!!」
「出血とまりません!」
「血圧低下!」
「心停止です!!」
がんばったょ、僕は……!!
【上手くいかなくてもいい】
……ってよくない!
そこは「私、失敗しないので」
って言ってほしいです。
【チョウヨハナヨ】
と育てられた娘は
【チョーウザイヨ。ハ?ナニヨ?】
と成長しました。
いつか、アゲハに変わると
母は信じています…。
【蝶よ花よ】
ここは真剣に考えなきゃならない……
選択を間違えれば大変な事になる。
……どっちだ?
ひらめいたぞっ!!
「右かなぁ?」
「えぇ~右ってコッチぃ?」
あからさまに不機嫌な声をあげながら彼女は右手をあげた。
あぶない、あぶない。
「ち、違うょ。俺から見て右」
「でしょ~?そうだと思ったんだぁ♪」
「コレくださぁい♪」
……ホッ。
我ながらうまく切り抜けた。
俺に聞く前から決まってるんだょなぁ(笑)
【最初から決まっていた】
イカロスが飛び立った頃は
こんなに熱くなかったんだろうし
北風と力比べをした時はもっと穏やかで
手のひらを透かしてみたら血潮すら見えた。
今や……
地上にいても溶けるし
上着を脱いだらヤケドして
見上げたら目を殺られる。
【太陽】
やらなきゃいけない事が山ほどあった。
役所の手続き、お礼の挨拶、名義変更…etc
そうだ……あの女にもお礼に行かなきゃいけない。
忙しくて、気が狂いそうだった。
けれども
たったひとつの感情だけが
私を突き動かす……。
【目が覚めるまでに】
あの人が目覚める前に終わらせないといけない。
全て終われば
あの人はもう目覚めないはずだと……。
納骨が済んでも尚、
彼が目覚めてしまうようで怖かった。
あなただけが
安らかに眠る事に苛立ちを感じ
また目覚めて現れる恐怖に怯える。
もうこれ以上、私を苦しめないで……