あぁ
秋だな…
散歩道
ふと香り
思わず辺りに視線をめぐらす
空にはウロコ雲
心の奥が
キュン
となる…
トイレで嗅ぐと台無し
【キンモクセイ】
「声を失ったお前が王子の心を射止める事が出来るのかい?出来なければお前は海の藻屑となるのだよ…」
声を失い、生えた足にも激痛がはしる…
それでもいい…
あの方に、もう一度逢いたい
そして思いを伝えたい…
「お願いします」
「そこまで言うなら…1度、1度だけ声を出す事ができるようにしてやろう。私からの餞別だよ」
人魚姫は必死で人間の言葉を覚えた。
最後の声で思いを伝える為に……
「気がついたかい?」
……ここは…はっ!?王子さま!
頭の中で何度も練習した言葉を思い出す。
届け、私の気持ち!!
…と発声しようと起き上がったその時…
「痛っ‼️」
こうして人魚姫は最後の声を発し
海の藻屑となったのでした。
【最後の声】
母はいつも帰りがおそかった
ひとりで食べるご飯も
宿題やれとか言われずに
好きなだけゲームができる事を考えたら何でもない
ある晩…
酔っ払って帰ってきた母がウザかった。
「はい、抱っこ~」
やめてょ
「いいじゃんょ~おいで~」
ストン……母のひざの上に吸い込まれる。
「いつもごめんね…」
やめてょ頭なでないで
「寂しくない?」
……やめてょ…一緒にいてほしくなっちゃうから
【寂しさ】
彼は、自分を信じて疑わなかった
その為の努力を惜しむ事もない
(もっと、足を使わなきゃダメだ!)
(腕じゃない、胸から動かすんだ、力強く!)
今日こそできる
彼は一声をあげ、足を蹴った……
「コ~ケコッコー!」
「じっちゃ、大変じゃ、ケンタが!」
「ほぅ、飛んだか?」
「いや、飛ばね、おぢた……」
「したば、ほっとけ…ニワトリば飛べね」
とりとべのない話
【とりとめのない話】
友達と遊ぶ約束をした日とか
遠足の前夜とか
クリスマスの夜とか…
あ…
成人式の前も、
結婚式の時も…。
今だって
明日ゴルフだったり
旅行行くぜ!だったり
ただ単に
明日仕事休み♪
だけでも
眠れない程楽しみだったのに
いきなり襲いかかる
喪失感
あぁ…
また明日から日常がはじまる……。
また泥の様に眠れる…。
【眠れない程】