「声を失ったお前が王子の心を射止める事が出来るのかい?出来なければお前は海の藻屑となるのだよ…」
声を失い、生えた足にも激痛がはしる…
それでもいい…
あの方に、もう一度逢いたい
そして思いを伝えたい…
「お願いします」
「そこまで言うなら…1度、1度だけ声を出す事ができるようにしてやろう。私からの餞別だよ」
人魚姫は必死で人間の言葉を覚えた。
最後の声で思いを伝える為に……
「気がついたかい?」
……ここは…はっ!?王子さま!
頭の中で何度も練習した言葉を思い出す。
届け、私の気持ち!!
…と発声しようと起き上がったその時…
「痛っ‼️」
こうして人魚姫は最後の声を発し
海の藻屑となったのでした。
【最後の声】
母はいつも帰りがおそかった
ひとりで食べるご飯も
宿題やれとか言われずに
好きなだけゲームができる事を考えたら何でもない
ある晩…
酔っ払って帰ってきた母がウザかった。
「はい、抱っこ~」
やめてょ
「いいじゃんょ~おいで~」
ストン……母のひざの上に吸い込まれる。
「いつもごめんね…」
やめてょ頭なでないで
「寂しくない?」
……やめてょ…一緒にいてほしくなっちゃうから
【寂しさ】
彼は、自分を信じて疑わなかった
その為の努力を惜しむ事もない
(もっと、足を使わなきゃダメだ!)
(腕じゃない、胸から動かすんだ、力強く!)
今日こそできる
彼は一声をあげ、足を蹴った……
「コ~ケコッコー!」
「じっちゃ、大変じゃ、ケンタが!」
「ほぅ、飛んだか?」
「いや、飛ばね、おぢた……」
「したば、ほっとけ…ニワトリば飛べね」
とりとべのない話
【とりとめのない話】
友達と遊ぶ約束をした日とか
遠足の前夜とか
クリスマスの夜とか…
あ…
成人式の前も、
結婚式の時も…。
今だって
明日ゴルフだったり
旅行行くぜ!だったり
ただ単に
明日仕事休み♪
だけでも
眠れない程楽しみだったのに
いきなり襲いかかる
喪失感
あぁ…
また明日から日常がはじまる……。
また泥の様に眠れる…。
【眠れない程】
「ねぇ、ひぃじいちゃん」
「なんじゃ?」
「衣替えってなぁに?」
「あぁ…。懐かしいのぅ…」
「もう、桜も咲かんじゃろ…」
2xxx年…
日本は熱帯化し
衣替えという言葉は死語となった。
【衣替え】