8/3/2023, 8:54:29 AM
病室は、白い。
アルコール消毒の匂いも、カーテンの揺れる音も、
僕を包み込む全てが白い。
だから、真っ黒い服の彼だけが
僕の世界を染めるただ一つの色だ。
毎晩消灯時刻になると枕元に現れて、
僕が眠気に誘われるまで話をしてくれる彼。
おやすみ、また明日。
そう言っていつものように目を閉じる。
けれど今日は返事がない。
不思議に思って開けようとした目に、
真っ黒な彼のマントが被せられた。
少しの間の後、ああ、また明日。と、
素っ気ない声が返ってきた。
そしてそのまま、彼の気配は夜の闇に溶けていった。
翌日、僕の部屋には新しい色が加わった。
いつも君がいた場所には、色とりどりの千羽鶴。
ふと、昨晩の会話が頭に浮かぶ。
「知ってるか?虹色を混ぜると黒になるんだぜ。」
どうやら僕の死神は、随分と優しい人のようだ。
8/1/2023, 1:30:13 PM
明日、もし晴れたら。
あなたはここを去ってしまう。
二人きりの空間に閉じ込めたのは、あなたなのに。
あなたの声が、わたしを怖い音から守って、
あなたの色が、わたしの世界を埋め尽くして、
あなたの息が、わたしの頭上を揺らしていって。
それなのにあなたは、いとも簡単に離れていく。
今この瞬間だって、
ふっと目を開ければ、あなたはもう
溶けて消えてしまっているんじゃないかって。
溢れる涙も、あの雨のように、
いつかあなたの一部になるのなら。
どうかこのまま、雷雲よ。