病室は、白い。
アルコール消毒の匂いも、カーテンの揺れる音も、
僕を包み込む全てが白い。
だから、真っ黒い服の彼だけが
僕の世界を染めるただ一つの色だ。
毎晩消灯時刻になると枕元に現れて、
僕が眠気に誘われるまで話をしてくれる彼。
おやすみ、また明日。
そう言っていつものように目を閉じる。
けれど今日は返事がない。
不思議に思って開けようとした目に、
真っ黒な彼のマントが被せられた。
少しの間の後、ああ、また明日。と、
素っ気ない声が返ってきた。
そしてそのまま、彼の気配は夜の闇に溶けていった。
翌日、僕の部屋には新しい色が加わった。
いつも君がいた場所には、色とりどりの千羽鶴。
ふと、昨晩の会話が頭に浮かぶ。
「知ってるか?虹色を混ぜると黒になるんだぜ。」
どうやら僕の死神は、随分と優しい人のようだ。
8/3/2023, 8:54:29 AM