それは物語の始まり
糸と糸とをたぐっていくと
やがて抗えぬ縁となって
繋がっていく
その糸を切らぬ限り
ところで、今を生きる
わたしの糸はどうだろう
例えばそれを満員電車で想像してみる
絡まりあった赤い糸、縄
身動きとれない
あまりにも人が多すぎる
からまった糸は引きちぎられて
人が多い現代の方が
赤い糸をたどれない
逆説的な皮肉
【赤い糸】
乾いた地面に蟻の行列
空には大きな入道雲
空気が湿ってきた
もうすぐ、雨がふる
【入道雲】
異世界にもっとも近い季節は夏だと思う
【夏・異次元の暑さ】
【ここではないどこか】
結局はこの場所で生きるしかないのだと
ため息をつきながら
鏡の向こうの世界を見つめる
熱望、渇望、情熱、そして
少しの勇気があればいい
それだけあれば
世界は変わる
歩きだす
少し高いところから
もっと、高い所から
頂きへと
想像力という翼があれば
心は何処へでも飛んでいける
電脳世界も助けてくれる
三千世界に揺蕩いながら
足は根を張り、この地に縛られていたとしても
お題 君と最後に会った日
ひらひらと揺れる白い手のひら
記憶の奥底にかすむ君の顔
僕はいまでもこの場所にいるよ
この場所から動けずに
白い骨になっても
記憶だけはあざやかに
手のひらが揺れる白く、白く
ゆらゆらと
あの日からずっと
顔も思い出せない君を待っている
朽ち果てていく身体と共に
【君と最後に会った日】(二作目)
オープンワールドというには
あまりにも狭く小さな小さなフィールド
その世界はすでにかなりの過疎で
百人にも満たない数のアバターが遊んでいた
校庭、教室、屋上
ほかにどんな空間があったっけ
もうほとんど思い出せない
机に座っておしゃべり
校庭で意味ない鬼ごっこ
そこにいない誰かの噂話
毎日とにかく笑ってた
笑っている僕たちは、だけど知っていたんだ
この世界がもう長くはないことを
あの日、校庭に並んだアバターたち
細い棒のような白い手を振りながら
みんなでその時を待っていた
笑っているキャラクター
泣いているキャラクター
手を振る 手を振る
そしてその時がきた
僕はいまでもあの校庭にいるよ
そして君たちが来るのを待っている
また鬼ごっこをしよう
そしてくだらない話をして
あははと笑おう