「水たまりに映る空」
雨上がり。
大雨の名残とでもいうように大きな水たまりがある。
そこに映っているのは先ほどの大雨なんて記憶にないと言わんばかりの青空。
お気に入りの長靴でそれを踏みつける。
ずっと雨が降っていればいいのに。
「恋か、愛か、それとも」
私はイライラした時、落ち込んだ時、自傷してしまう癖がある。カッターを取り出してぐっと当てる。痛いけど、それが落ち着く。傷口をじっと見つめていると、だんだん血が滲み出てきて、それをそっと舐めとる。鉄の味。最も、鉄を食べたことなんてないが。
時折、あなたの白い肌を見ていると酷い衝動に駆られる時がある。傷ひとつない美しい肌。さらさらと綺麗な心。この気持ちをなんだろうといつも思うが、そんな時いつも思いつく言葉が、「美味しそう」。
いつの日か、あなたが体育の授業で怪我をしたことがあった。小さな擦り傷。心がかっと掻き立てられる感覚。この気持ちは、恋か、愛か、それとも、
「約束だよ」
ある日、あなたと勝負をした。ちょっとしたカードゲームで、買った方が負けた方に一つお願いができるというものだ。私は最初、買った時にはハグでもしてもらおうかなと考えていた。結果は私の勝ち。でも、改めてそれを言うのは恥ずかしくて、つい、あんな変なことを言ってしまった。裏切らないでね、私のこと嫌いにならないで、約束だよ、って。
本当に裏切ったのは私だったのに。
「傘の中の秘密」
大雨の休日に部活があった。あまりにも雨がすごくて、他の部活は誰もやっていないのになんで自分の部活だけやるんだろうって、少し嫌気がさしていた。でも帰る時、あなたが「傘持ってないの?一緒に帰る?」って言ってくれた。びしょびしょじゃんってタオルを貸してくれた。雨に濡れた前髪を拭いたタオルは、あなたの香りがした。肩を寄せ合って話しながら帰ったとき、傘に当たる雨は優しい音をしていた。それだけでその日はとてもいい日だった。結局風邪は引いちゃったけど。
この恋心は、あの日の傘の中だけの秘密。
「雨上がり」
私は雨が好きだ。窓を開けるとそっと流れ込んでくる優しい音、少し湿った土の匂い。それらはいつも私の心を落ち着かせてくれる。家の中でそっと眺めるのも好きだけど、傘を差して外へ出るのも悪くない。お気に入りのオオオニハシの形をした傘。雨の中翼を広げる。それでも、すぐに雨は止んでしまって、私のオオオニハシは光の雨を一身に受け止めていた。