でこぼこの外面とはうってかわり
2つに割れば清々しい香り
ミカンほどは甘くなく
スダチほどは酸っぱくなく
お菓子にもおかずにも
ひと絞りで鼻に舌に爽やかに
ひとかけの皮で見た目華やかに
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
【柚子の香り】
昼も夜も
見上げると
圧倒的スケールで
静かに慰めてくれる
【大空】
今日は義母の面会で
記憶の保てない彼女の
職員さんに対する
とりとめのない愚痴を
小一時間傾聴していたわけですが
客観的に見るとそれは誤解
と言う案件も多いけど
彼女の中では真実なわけで
いつもはそれを話す相手もいないわけで
話すうちに顔に色が戻ってくるのを
隣に座って聴いていて
吐き出すことって大事だなと思ったけど
全開なマイナスオーラにやられて
だいぶ疲れたー
ので私もここで吐き出しておく
という【とりとめのない話】
君さえいなければ
私は大空を自由に駆けめぐる
そして子馬のたてがみをなで
彼女の流した涙も
そっと乾かしてあげられる
君さえいなければ…
でもいいよ
君と一緒なら
今夜彼女は温かいミルクを飲んで
早めに夢を見るだろう
そして彼女が爽やかな朝を迎えたら
私たちは共に静かに消えているだろう
「邪」へ
「風」より
【風邪】
明るい灰色の空から
スローモーションのように
ひらひら降りて来るかけら達
裸の枝も落ち葉の地面も
明るい白を纏い
積もるほどに音も吸い込んで
ただ静かなモノトーンの景色に変わる
色と音が絞られた分
心は内側に向かい
なんだか私は哲学的になるのだ
【雪を待つ】
敵の飛行機から撃たれながら
じいちゃんは命尽きる瞬間に
遠く離れたところで帰りを待つ
ばあちゃんと4人の子どものことを
心に浮かべたのだろうか
紙1枚の知らせになって
じいちゃんが帰ってきたあと
女手ひとつで
子ども4人育てたばあちゃん
その心には
じいちゃんの分までという
支えがあったんだろう
子どもは皆結婚し、孫が生まれ
ひ孫が生まれ、玄孫が生まれ
超長寿を全うしたばあちゃん
時間と空間と生死を越えて
二人の心は寄り添っていたのかな
【心と心】