近付きすぎて見えなくなるものだってあるよ。ずっと友達でいようね。って、ほんとうの友達ってなあに。の散弾を飲み込んで遥かに遠くまで至ったのに。死に至らないためにも随分前に臨んでおいたほうが、紳士然としているのかなあ?
不必要な上手さが、曖昧には足りないんだと思う。明日を迎える最低基準は、両手を上げて喜べたのに。いい人でいたい。そのためだけの前借りだった。開いた心の扉が痛む。それでも君の所為ではない。
おかえり。貴方の待つ家にずっと帰り着きたかったよ。着慣れて草臥れたエプロンを、笑って伸ばしたりしたかったよ。行かないで、って、縋ったりしたことはない。信じてるみたいに目を逸らしていたのかなあ。
跳ねるような陽射しに笑って、足音に合わせて前を向いて、大きくなった背丈を追い越さないでいたくて、自分はずっと、ここで。ここに…いつしか…いないもの…を、見なければ信じてられると思ってた。
肌に合わなくなったものは、いっそ仕舞い込んでしまうこと。そういう手段はいつも必要だ。もしかしたら、もう二度と袖を通さないものがあるかもしれない。もしかしたら、その中で穴を開けられて、密かに息を引き取るかもしれない。そういういろんなしがらみに、目を逸らすように、蓋を閉めること。たぶん、そういう手段が必要だ。
優しい眠りについているなら、目を覚まさないでいてほしいな。暗い夜はたぶん淋しくて、ときには優しいと思うから、君のための太陽が昇ってこないようにって何度も祈った。
魔法を使えるわけじゃないし、奇跡を起こせるわけでもないし、世界は君のためだけにはないから、夜はいつも朝を連れてきてしまう。少しでも眠っていたい、って思うなら、帰りたいって思うなら、それを知っているなら、せめて…、せめて、声が枯れるまで。
一つに手を付けることを恐れて、できるだけ深い部分には触れないようにやってきたけれど、結局手を付けなかった選択だけが手元に積み重なっていて、頼りない感触が足元を覆った。一人で、二人で、ここからどうやって歩くんだろう。道標通りに往けないのに。
はじまってしまえば、いつか終わらせないといけない盤面に乗ってしまう。きっとなんでもできたのに。可能性を捨てていくのが怖くて、なにも掬わないままの日々を、眠れない、っていいながら眠ったみたいに過ごすことを、はじめて今何年になったんだろう。
たとえば、どうせ意味なんてないんだし…、俯いている間にいつも始まっていて、手に取り損ねてしまうけれど、大切だと思ったものの終わりくらいは、顔を上げて見届けられるといい、かな。