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10/20/2023, 2:22:03 AM

 全く別の人同士が、全く同じ気持ちで寄り添いあうなんて、そもそも無理な話だったんだよ。口にしてきた分かってるっていう言葉は、辞書を開いて読んだばかりみたいな意味なんだから、仕方なかったんだ。開かれない辞書よりは有意義だった。それだけを受け入れていくしかないんじゃないかな。
 何千年の歴史ある建造物とかだって、人に晒されて数週で朽ちていったりするでしょう。一人同士で生きられる人たちしか、多分本当には一緒に居られないんだろうな。って。
 渇望を真実味とあんまり混ぜたらいけないよ。お腹が空いていたら何でも美味しくなるのと一緒なんだから。紙面が擦れる音はやけに耳に障る。辞書でも一緒なんだからね。いつか一人になれるって、最後の1ページ分、信じておくからね。

10/18/2023, 12:54:44 PM

 愛というのはもっと、尊くて、清らかで、美しいものではなかったのか。こんな自ら望んで身を切るような無味の苦しみを、取り憑かれたように追い求めるものだったか。陽炎の揺らるような暮れの中、蔵の中はひたりと冷えるような感覚があった。こころのそういう部分に踏み込んだような感触が。
 理性を縛る理性があるのだ、と、ここにきてはじめて気が付いた。手探りで真暗な闇をいくときの、夏のい草の香りが生易しく。苦しみ続けることに美徳を見出してしまう愚かさを、こんなものを、愛と呼びたくなどはなかった。
 それは精神的潔癖だろうか。モラルも一種人間的本能であるらしい。欠けてなどいない。いないといったら、いないのだ。こんな真夏の外れの場所は、たしかに此処から帰れるだろう。それでも、忘れたくても忘れられない。忘れたいとも思えない。

10/17/2023, 5:39:21 AM

 光に手触りがあるってさあ、大体の私たちは、思っているのかもしれないね。あなたのことを掴めないのに、あなたは私たちのことを灼きつけたり、差したり、暖めたり、貫いたり、するし…。
 ぬくもりの境界は、優しさの境界は、どこまでいってもみつからなくて迷子になってしまう。いつになったら朝がくるのか、たぶんみんなあんまり知らないまま、眠りにつくんだと思う。きみを慰めるために使った言葉が、境界を超えていないといいな。例えば明日、眠りを閉じるカーテンの向こう側に…、

10/16/2023, 3:51:45 AM

 誰もいないところが好き。そこには自分もいないから。刺すみたいな視線の正体が、刺されるみたいな気持ちだったり、割とある。人に見せたくないものばっかり見られてるような気になって、やったこともないテーブルクロス引きよろしくひっくり返したくなることもある。
 もしみんなに何も知られずに頼めるなら何を言うだろう。そういうことを考えたいし、だけどあんまり腹は膨れない。惨めじゃない人になりたい。それって自分次第なんだとも思うけど…、だから、あんまり見ないでね。消えたい気持ちになりたくないし。

10/14/2023, 6:13:43 AM

 子どもみたいだね。身体ばかり大きくなってしまって、でも、そんなのみんながお揃いだもんね。遊具は小さくなってしまったけれど、このままあの高い電波塔の上まで登ろうか。側溝に敷き詰められた桜の花弁に幼い時間を、何時間も、注いだときのことをもう覚えていないと思うけど。
 明日は何をしようかって毎日考えてる?目が合ったら微笑むみたいな懐こさを、何にも知らない楽しさを、無くさないで子供でいたいね。こんなこと言って、大人みたいだね。だけど、何でもできるって思ってるよ。

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