自分はどちらかといえば冷めている性格で。
友人達からの評価も大きく離れてはいない。それなのに。
「後ろ姿の写真撮ってもらっていい?」
映えるやつ、と君は笑ってスマホを差し出す。
そんなこと気にする性格だったんだ、と返事しながら、僕はそれを受けとる。
花畑の前に立った君に、僕はカメラを君に合わせる。当然のことながら顔は見えない。
その一瞬。
あぁ、君の顔が見たいなんて。そんなこと。
僕はいつからこんなこと思うようになったのか。
自分の考えに自分で驚く。
いつの間にか僕のもとへ戻ってきた君が「美人に撮ってくれた?」と笑う。
「どうかな」なんて言って。
さっきの自分の頭の中の言葉は、絶対に言ってやらないと、勝手に決めた。
「空が泣く」
多分、9割の人間が雨だというだろう。かくいう私もそうである。
この言葉から、もっといろいろな解釈ができる人を、きっと天才とかそんな言葉で呼ぶんじゃなかろうか。
まぁ、自分の想像の範囲の言葉は安心できるから、世の中全てが天才じゃなくて良かったと思う。
「LINEが返ってくるまでの時間なんて、いちいち気にしない」
そんな発言をしたことを後悔した。いや、ついこの前までは、本当にそう思っていたんだけれど。
既読がついてから10分。
君からの返信がくるのを待っている。
息を吸って、吐く。
特に何をするでもなく、ただ呼吸をする。
劇的な変化も、運命的な出会いも、悲劇的な瞬間も、何もないまま、とりあえず、淡々と。
人は、命が燃え尽きるまで、生きている。
ふと目が覚める。覚めてしまった。
昨日はあまりの疲れに、10時前には布団に入ったはずだ。外はまだ暗い。
今の時刻が12時か、3時かでは、心の余裕が違う。
では時計でも見てみようか。
いや待て、それで朝の4時とかだったらどうしよう。後1時間で起きなければならない。起きたら仕事に行かねばならない。イヤだ。
横に目をやれば、賑やかな音を立てて寝ている同居人の姿。
コイツは確か今日仕事が休みだった。くそ羨ましい。
もしかして、このイビキに起こされたのか...?
「......ちっ」
何にせよ、何時にせよ、まだ起きるには早い。
とにかく再び眠らねばならぬ。
同居人の鼻つまみ静寂を取り戻すと、布団を被った。