病院のベッドでぐったりと横たわる君
ついこの前まではあんなに元気だったのに
君との思い出が走馬灯のように出てきた
赤く腫れた目をまた涙が濡らす
ハンカチはぐしょぐしょで使い物にならなかった
どうして救えなかったのか
自分の身を犠牲にしてまで私を守ってくれた
悔しくてしょうがなかった
1度でいいから目を覚まして欲しい
声を聞かせて欲しい
そんな願いが届いたのか
うっすらと瞼が開いた
言いたいことは沢山あったけど
これだけは言う
「ありがとう、ごめんね、」
君は少し笑みを浮かべて
また瞼を閉じた
もう二度と開くことは無かった
「ありがとう、ごめんね」
私は注目されるのが好きだ
でも注目されたことは今まで一度もなかった
勉強でも平均以下
運動でも平均以下
何も取り柄のない私に
どうしたらみんなが注目してくれるのか
足りない頭をフル回転させた甲斐があった
これが私の望んでいた景色
私が世界の大スターにでもなったような気分
今日が今までで1番良い日
もしかしたらテレビにも出ちゃうかも?
逆さまに落ちていく私を見て
みんながスマホを取りだす
『逆さま』
重すぎる瞼を必死にこじ開けて授業を聞く
流石に2週間3時間睡眠は私も堪える
どれも全部君のせいだ
君と出会った日
その日から私は夜も眠れないほど君の事を考える
君のせいで授業もまともに聞けない
君のせいで私が私じゃなくなるみたい
君とまともに話せない
全部全部君のせい
私自身も分かっていたけど
こうでもしないと自分じゃなくなりそうだから
そういうことにしておこう
『眠れないほど』
毎日のように夢をみる
それは私の理想が全部詰まっているような
いつでもそこに引っ越したいくらい豪華な夢だった
でも6時30分には理想も何もない
ただのリアリティがある日常
幻滅する
勝手な理想に溺れて
追い求め続けていく
夢と現実の区別をつけなければ
いつか
夢か現実か分からなくなりそうなのに
『夢と現実』?
私ばっかりいつも焦って
バカみたい
また1人で勝手に悩みこんで
1人で勝手に堕ちていく
そんな私に希望を与えてくれた
私の運命の人
ロマンチックな言い方だけど
そうでもしないと笑みが零れそうだった
だから置いていかないで
さよならなんて言わないで
そんな願いは叶う訳もなく
また私は1人になった。
「さよならは言わないで」