🐈‍⬛‪⋆ . * 🌎☽ りら猫帝国☾

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9/3/2025, 3:04:42 PM

魔法使いが
王子様に会うために
人魚の私に足を与えてくれた

地上に着いて
私は泣いた
慣れない足で歩くことは
想像以上に辛くて

「こんなんじゃ、ドレスに合う靴では踊れやしない」

うずくまって泣いていると
一人の男の声がする

「足が痛いんですね」
「さあ、私の肩につかまってください」
「ゆっくりでいいですからね」
「大丈夫」

コクコクと涙で言葉にならず頷く
男の言うように
肩につかまり立ち上がると
男は私の身体を掬うように
抱き上げて、そのまま
男の住まいに私を置いた

こじんまりとした男の部屋で
少しずつ歩くことを覚えた
夜は男が私の足を優しく摩ってくれる

あんなにも痛くて
歩くことすら困難だった足は
男が用意してくれたスニーカーで
近くのスーパーに買い物に行けるようになった

男は朝起きて出かけると
夕方までは帰ってこない

手先が器用な私は
男のために料理をし、洗濯をし、
掃除もできるようになった

このところ
男を朝に見送り、男が帰ってくるのが
楽しみになっている

「私、王子様と踊る必要はなかったのね」

スニーカーを撫でながら
男の帰りを待ち侘びた

#82「Secret Love」

9/3/2025, 9:58:54 AM

どれだけ教科書のページをめっくても

私の人生に起こったことは
書かれていないことだった

誰も教えてくれなかった

「助けて」

ノートに書くだけじゃダメだということ

言葉にして
一番言いにくいことを叫んだら

私の新章が始まった

#81「ページをめくる」

9/1/2025, 12:39:03 PM

汗だくで上った
あの急な階段も

人工芝で並んで
寝転がったことも

下北沢の古着屋さんで
売ってた変なTシャツも

夜更かしして見た
B級ホラー映画も

間違えて大量注文した素麺を
食べ続けることになった日々も

忘れ物にしようと思ってたけど
全部、探し出して拾い集めて
上書きするから、安心してね

私、あなたのことだけは
忘れるわ



#80「夏の忘れ物を探しに」

8/31/2025, 3:06:55 PM

今日は、まだ何もやってなかった。

午後6時までのログインボーナスに、
運良く間に合った5時。

ログインして、
ミッションを一通りこなしても、
集中力は欠けている。

「お疲れ様です。
今日はお休みします。」

メッセージを送信

今日は、で良かったのかな?

週末だとは感じていたけれど、
8月も今日で終わりということに、
送ってから気付いた。

何か始まった気がしていたけど、
何にも始まってもいないのに、
止まったまま。

しんどいな

夕凪が終わって、
風が少し吹いたのを感じて、
虫の音が聞こえ出す。

「多分、明日も休みます。」

このまま風が運んでくれれば、
あなたの受信箱に届きますか?


#79「8月31日、午後5時」

8/30/2025, 1:26:29 PM

不確かな未来に
足りないもの
両手で掬い

不完全なままでも
助け合って
凛として

不自然と言われても
他勢に耳を貸さず
両片想いでいましょうね


#78「ふたり」

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