夏風邪を拗らせ
止まらない咳で
眠れない夜
キミから届いたメッセージ
「いつも私に無理するな!って、言ってたくせに。
自分は無理してんじゃん。ばーか。」
最後に返信不要の文字
#67「終わらない夏」
あんな場所にいたせいで
自分の馬鹿さに気づいたせいで
あなたの苦しみも
今ならわかるけど
許さないから
「くそばかやろう」
ギラギラいつまでたっても
雨が降りそうにもない
脳天気な夏空に
「くそばかやろう」
何だってできそうな希望も
いつだって砕けそうな自信の無さも
見上げた空が広すぎて
「くそばかやろう」
私の苦しみが全て
愛しいあの人に続いてたことも
「くそばかやろう」
明日もきっと
私は愛に生きている
#66「遠くの空へ」
ただいま
おかえり
ずいぶん遠回りした帰り道は
全力で走って、転んで、崖っぷちで見た走馬灯
「あの頃は良かった」なんて
思い出になんかまだしたくない
必死で糸を手繰り寄せた
帰る場所
やっと聞けた声に
安堵で涙
また一緒に戦えるね
前ほどではないけどね
何でもいいと思ってたけど
あなたがいないとダメだった
#65「!マークじゃ足りない感情」
いつも待ち合わせた喫茶店で
向かい合う席に座る
二人は今日、別れを決めた
「御注文はお決まりでしょうか?」
「アイスコーヒーを2つ」
いつも通りのオーダー
夏はもう過ぎたけれど、暑さはまだ変わらない
もう少し涼しくなれば
「ホット2つ」だったのに
伏し目がちに瞳を潤ませ
けれど、涙はこぼれない
唇を少し噛むキミ
「仕方ないよね」
キミを見ないフリをして
窓に目をやり
呟くように切り出した
俯いて「ごめんね」と返すキミ
運ばれたアイスコーヒーに
ボクはストローをさして
カラカラと氷をかき混ぜる
キミと視線が合うことは
もうないだろう
次にキミと会う時があるとしたら
キミの隣には
ボクじゃない人がいるんだろうな
アイスコーヒーを一気に飲み干して
「この後、仕事でさ…」
掠れた声で続かない言葉
「ありがとう」が言えないまま
キミを置いた
振り返らないボクの背中を
キミは見ていただろう
#64「君が見た景色」
好き放題言ってくるバカの言葉に
わざわざ貸す耳は無くそう
そう決めた
#63「言葉にならないもの」