どうすればいいの?
「変わらないことだと思っていたのではないですか?」
季節が変わるということの意味を知って、
それでも過ぎ去った時間に今更、
あの花はもう咲かないと知って今更。
散りゆく花びらが美しいと、穏やかな風のなか、呑気に見上げていた、あの日。
キャンドル
海のようでした。
赤い炎が揺らめくたびに、潮の匂いがしました。
私の心を永遠に照らすはずでした。
ある日、つよい風が吹きました。
嵐は全てを吹きさらってしまいました。
今やこの閉ざされた暗闇の中、あの潮の匂いや揺れる炎の記憶はぼやけていきます。
一本の燐寸さえあれば。また火を灯せるのに。
そうすればまた…
あなたがくれたもの。
それはあなたの全てでした。
たくさんの想い出
どうしたんです? そんな両手いっぱいに抱えて。涙でぐしゃぐしゃじゃないですか。
はやくこれを燃やして欲しい? ええ、まぁ、それが仕事ですから構いませんけれど。ずいぶんたくさんあるようですが……。
ええ、ええ、わかりましたよ。
はい。
どうです? ……。
……さぁ。私に聞かれましても、この店に着いた時にはもう泣いてらっしゃいましたよ。
ええ。……それならよかったです。また不要な想い出があれば、いつでもお越しください。私の炎が責任持って、どんなものでも、灰にして差し上げますよ。
冬になったら
フィルター越しに見た青い空は、入道雲が目に痛いほどでした。
『冬になったら私を思い出してください』
雪の降りしきる街路を一歩、進むたびに、指先に雪が触れて、雫が滴るたびに、その言葉を思い出します。
入道雲。
照りつけるあの白。
『冬になったら私を思い出してください』
はなればなれ
まぁでもさ、もし会えなくなっても、僕はべつにさびしくなんかないけどね。
君がいなくたってやっていけるし。一人でだって楽しめることあるし。
あぁ、もう交差点か。
じゃあね、明日は貸した本、忘れないでよ。