きらきら落ちてくお星さま
みんなの願いを背負って燃えてゆく
はやる気持ちのまま走ってく
急かされるように消えてゆく
いつかずっと遠くに届く光の尾
でもあなたの願いは叶わない
死ぬために生まれたわけじゃなく
にどとはみれぬおんなじいろの
ゆれるひかりがなみだみたいね
くらいところまで、くずになるまで、
光あれと願うことがあなたの苦しみに変わる前に。
星
願いが1つ叶うならば
あなたの声で世界を聴いて
あなたの瞳で世界を知って
あなたの両の腕で眠りたい
忘れてくれとか愛してるなんて言葉で許さないで
ごめんねとかありがとうって突き離さないで
あなたと共にいない私を認めないでよ
言えなかったまま喉の奥に詰まってる
愛されずとも愛して芽吹いて咲いて
巡る命をまたあいせるだろうか
きっといつまでも変われないままでいるからさ
忘れられずにいることもなにもかも
ぜんぶ許さないでいてよ
願いが1つ叶うならば
ただあなたに会いたい
許さずにいてくれたら独りでないような気がして。
願いが1つ叶うならば
「ほんとにこの時期って嫌。目とか鼻が痒くて。」
そう言って3枚目のティッシュを抜き取り勢いよく鼻をかむ彼女の、赤くなった鼻頭を見てくすりと笑う。
相変わらずアレルギーの酷い様子で見ていて痛々しいが、慣れてくると涙目がなんだか可愛く見えてくるものだ。「笑わないで!ほんとに辛いんだから!」なんて抗議しつつ私の腕を抓る彼女はいつも通りの容赦の無さでこれでもかと眉を吊り上げている。
「ごめんごめん。鼻セレブ買ってあげるから許して。」
「やった!ちょっと良いやつだ!」
柔らかいティッシュを貰えるだけでこんなに喜ばれるのなら、もう少しくらい花粉に困ってくれてもいいのに。いや、辛くなくなるのならそれに越したことはないのだけれど。もう少しくらいは弱った君を見ていたいのも本音だ。
風が運んでくるのは、単に花粉や種なんかではないのかもしれない。
遠くで鳴る音、生命の息吹、こころ。風が運ぶもの。
風が運ぶもの
Q:あなたの存在意義
A:
question
厳冬の木枯らしに穿たれ、身を削ぎ落としていた山にもようやく春が訪れる。薄く霞のかかる山頂から少し下に過ぎると、白く色づく桜の成木の声が。その枝に纏われた小さな生命たちの芽吹きが。
そう遠くない内にやって来る春風と共に、蕾がほころぶその瞬間を人々は今か今かと待ち侘びて、新たな節目を迎え入れる為の準備をするのだ。
「あら、このホットミルクは蜂蜜入ってないのね」
彼女が隣で意外そうな声を出したので横目で見ると、キリリとした眉尻が少しだけ下がり、なんだか悲しそうだったので思わず吐き出した。
「ちょっと。何笑ってるのよ」
「ごめんごめん。そうだった、君は案外甘いものが好きだったものね」
初めは格好つけてコーヒーすらブラックしか飲まないと豪語していたのに、はちみつホットミルクを飲ませてからすっかりハマってしまったのかそればかり強請るようになって。そのうち自分で淹れるようになった君がホットミルクに大量の砂糖を溶かしているのを見兼ねて、わたしが蜂蜜を入れたんだった。あの頃は顔を強張らせながら一生懸命に慣れないことをして、ぎこちない笑顔を貼りつかせていたっけか。
「子供扱いしないで。ただ蜂蜜の味が好きなだけよ」
透き通る彼女の白い肌は暖かな空気とマグカップから立ち上る柔らかな湯気に晒されて、じんわりと耳が染まる様子が伺いしれた。あの頃とは想像もつかないくらい、彼女は甘い顔を見せる。ツンツンした猫のような頃の彼女も好きだけれど、今の少し抜けていて意外に子供っぽい彼女がいっとう好きだ。
「ねえ、明日は一緒に蜂蜜を買いに行こうね。それで、夜に蜂蜜入りのホットミルクを飲もう。」
「…仕方ないわね。ついて行ってあげる。」
得意げに鼻を鳴らしたその様子が少しおかしかったのでまた笑いそうになったけれど、なんとか堪える。代わりにホットミルクをひとくち、口に含んで溶け流すと彼女のとびきりに甘い笑みが心身の深奥にまで染み込み、どうにも落ち着かないくすぐったさを胸の奥底に追いやった。
「あーあ。君がずっとここに居ればいいのに!」
突然大声を張り上げたわたしに驚いたのか、本物の猫のように肩を震わせた彼女が微笑ましい。「君は温かい部屋でホットミルクを飲んで、コタツで丸くなっているのがお似合いなんだから!」
そう冗談を言いつつも、どこか自分でも本気だと分かっていて後ろめたさがある。もちろん彼女のことも心の底から愛しているけれど、わたしの根底にあるこの感情はそれを軽んじているのではないかと思うこともあるから。けれどもわたしはこうして駄々をこねるように嘆きながらでも彼女に傍にいてほしいと願うし、彼女もそうだと信じたいのだ。
「……そうね」
しばらく宙を見て黙っていた彼女が珍しく口を尖らせて照れた様子でこちらを見やった。
「あなたがずっとはちみつ入りのホットミルクを作ってくれるなら、帰ってきてもいいわ」
その瞬間に胸の中いっぱいに渦巻いた得も言われぬ感情と安堵感は涙腺を緩ませ、溢れ出る寸前のところで寸でのところで堪えた。彼女がわたしの涙をからかいながら拭ってくれるさまを想像して湧き上がったその笑いには愛しさすらも感じられる。
「うん、作るよ。だって君はホットミルクを作るのさえ苦手なんだからね」
「そういうところ。昔から変わってないわね」
わたしの張り合い甲斐のない返答に呆れたように肩を竦め、悪戯っぽく舌を出した彼女の少しだけ赤い舌先が憎らしいほど愛おしい。ふいに身を乗り出して口付けた唇はなぜか蜂蜜とミルクが混ざり合ったような甘い味がしたけれど、きっとそれは彼女がわたしにとっての蜂蜜だからだろう。
傍らに置いたマグカップは殆ど熱を失ってしまって、代わりに身体中が痺れたように暖かい。もうすっかり夜も更けていたようだった。
「さ、そろそろ帰ろう。」
彼女は頷きながらマグカップに残った最後のひとくちを飲み干して立ち上がったのでわたしもそれに倣うと、不意に彼女の両腕がわたしの首に巻きついてきて二人分の体重を支えるラグの毛足は驚いたように逆立った。耳に当たる吐息が揺れている。
「私あなたがいないと駄目よ。嘘じゃない。だからあなたもずっと、もっと、私を必要としていて。約束して。」
そう耳元で囁く彼女の声は先ほどより何だかうわずっていて、わたしに縋って離れたくないと駄々をこねているみたいだ。普段から2人きりになると少し情緒が幼くなるが、今日の彼女は普段よりよほど子供っぽい。
「じゃあさ、約束の証に小指を出してよ」
同じようなことを何度も繰り返してきたせいか、彼女の目は若干鋭い。わたしの提案を聞いて怪訝な表情を浮かべた彼女がおずおずと差し出したのは左手。その白く華奢な小指にわたしの小指を絡めると、「ゆびきりげんまん、うそついたら」そう歌うように口ずさみながらわたしは自分の左手の小指をそっと解く。
「はりせんぼん飲ーますっ!」
「ちょっと何よそれ!そんな約束しないわよ!」
彼女は顔を真っ赤にして抗議したけれど、わたしが笑って誤魔化したのを見ると諦めたのか呆れたのか、小さく溜息をついてまた笑ったのでわたしも釣られて笑ったのだった。
「あなた、昔から約束が好きね」
「君が望むから。」
甘い香りが部屋に広がる。彼女と出会ってから、蜂蜜の消費が増えた。一年越しに甘ったるいミルクを味わうたびにまだ彼女が傍にいるのを実感する。ねえ、あの蜂蜜は君だけのために買っているのを君は知らないでしょう。
なあなあの関係を引きずっているわたしたちには蜂蜜入りのホットミルクがお似合いだ。その生ぬるい甘ったるい関係が心地良いと思えてしまうくらいには、わたしにもどうやら彼女の存在が必要なのだ。
もう少し待てば、春がやってくる。暖かな風に揺られる花の美しさを例うならきっと彼女だろう。芽吹の季節。始まりの季節。誰もが待ち望むそれを喜べないのは、肌寒さに寄り添う今を手放し難いから。私の春。わたしの冬。巡る季節と共に、凍てつく雪が舞い落ちるその瞬間をわたしは今か今かと待ち侘びて、暖かなミルクに入れるための甘い蜂蜜を用意するのだ。
約束と言えば約束の地、カナン。カナンと言えば聖書で乳と蜜の流れる場所って言われてたっけな…そうだ!ホットミルクだ!という超単純思考回路。
約束