4/6/2024, 2:23:27 PM
『君の目を見つめると』
「あ……」
君の目を見つめると、君はすぐに逃げてしまった。
少し残念に思う。
君の目はとても綺麗だから。
「おーい、待ってよー」
普段ならそのまま気にしないけれど、今日はなんとなくもう少し眺めていたくて君を追いかける。
なのに君は私のことなんか振り向くことさえなく、逃げる。
でもここは広くもない一人暮らしの1LDK、すぐに追いつくことができるのさ。
「ねぇ、もう少しだけ見せてよ」
ご機嫌を伺うように頭を撫でてみると、気持ちよさそうに目を瞑ってその場に座った。
しまった、これじゃあ目が見えない。
「まぁ、いっか」
またいつでも見る機会はあるし。
今はもう少しだけこうしていよう。
「にゃー」
うん、君ももっと撫でろと催促しているみたいだしね。
4/5/2024, 4:19:30 PM
星空の下で、君は白い息とともに呟いた。
「今日も星が綺麗だね」
それは僕に言った言葉だったのかもしれないけれど、僕は無視した。
「もうだいぶ寒くなってきたから、そろそろおしまいにしないといけないかもね」
僕は常々そう思っていたのでつい同意しそうになったけれど、ぐっとこらえて無視を続ける。
「じゃあ、またね」
そう言って君は僕を振り返ることなく家へと帰って行く。
やっと彼女が帰ってくれたことに安堵して、ため息をつきながら下を向く。
彼女が約二月程前から、毎日欠かさずに供えてくれる花とお菓子が見えた。
本当はずっと彼女のことを見守っていたいけれど、それはきっとお互いのためにならない。
だからそろそろ、本当にそろそろ行かないと行けない。
「はぁ」
もうすでに白くなることのない、ため息を吐いて。
彼女が綺麗だと言った空へそっと向かい始めた。