鳥かごの中は安心に満ちていた。
いつも見守られていて、どんな時だって助けを求めれば応えてくれた。
それに、外に出たい時には自由に外に出してもらい、帰ればまた安心して眠った。
気儘だった。
鳥かごを出たあの日から、徐々に世界は怖いものに変わっていった。
怖いものから逃れるため、私は自ら新しい鳥かごに入り、怖いものがひとつ増える度に、少しずつ鳥かごを頑丈にした。
けれど、どれだけ頑丈にしても、あの頃のように安心して眠れる事はない。
今となっては外に出ることもままならない。だけど、これでいい。ここで少しでも生き永らえるのだ。
また外に出たいと思える日が来るかどうかは、わからないけれど。
世の中には、色んな種類の情があるけど、その中で友情は少し苦手だ。
愛情や同情なんかは、1%から100%まで、自分の思った通りの分量を素直に表現する事に抵抗はない。
でも友情は違う。
相手がどの程度、自分に友情を感じてくれているかを推し量ってしまう。
同じだけの分量で返そうと、ついバランスを取ろうとしてしまう。
傷つくのも傷つけるのも怖いのだろう。
相手を信頼して、ストレートに友情を表現出来たらいいのに。
これまでの、これからも続く努力が実って、いつか花咲いて欲しいと思う一方で、花なんか咲かなくたっていいとも思っている。
月並みだけど、自分なりの幸せを見つけて生きていって欲しい。
もしもタイムマシンがあったなら、あの頃許せなかったあの子を許したい。
今ならわかる。あなたのせいではなかった事。あなたが自分ではどうにもならない衝動を抱えて、理解されずに苦しんでいた事。
未熟だった自分の怒りを、今では後悔しているよ。
どこでどうしているのか、知るすべはないけれど、あなたが心穏やかな時を過ごせていますように。
今一番欲しいのはやすらぎだ。
一体いつからこんなにも弱く、いくつもの不安を抱えてしまったのだろう。
もっと気楽に生きていけたはずだった。もっと自由に。
だけどそっちの道は選ばなかった。
こっちの道が不安だらけなのは仕方がない。気楽に、自由にやっていたら、取り返しのつかない事になって後悔するのが目に見えている。
こっちの道を選んだからには、やすらぎを欲しがるなど、愚の骨頂なのだ。
今ではないけど、いつかやすらげる時が来るのを夢見て。