初めは君のことを僕が一方的に冴えない子だなと知っているだけだった。
それから少しして委員会が同じになったり、とにかく偶然が重なり友達のひとりにはなれたはずだ。…たぶん。
そのうち君は僕の体調、家の事情、先生との関係性など気がついていてなお、聞かないでくれた。
卒業が近づいて来ると彼女と親友と呼べるくらいの仲になっていた。
心のどこかで引っかかっていた疑問を小さく漏らすと
「偶然?運命?かは分からないけど、少なくとも私はあなたに出会えて良かった。それじゃダメ?」
その一言で僕は長年味わっていた孤独が埋められていくような。体の真ん中らへんが満ち足て溢れかえるような感覚がした。
やっと彼女に伝えられると決心がつき春休みに会う約束もしたのにな。
直接言葉に出来ないけれど、どうか伝わって欲しい。そんな願いを込めた手紙はもう看護師さんに託した。
もし来世があるなら…
また会いましょう。
僕の妹はバレーボールをやっていた。
全国大会にも出場していたので結構凄い選手だと思ってる。
昔から跳躍力がすごくて、密かに鳥の血が混ざっているんじゃないかと思ってた。
けれども先週起こった事故で子供を助けた時に妹は跳べない翼になった。
「ススキの森をぬけた先では猫の集会が開かれているらしい。」
そんな噂が小学校で拡がったのはもう何年前だっただろう。当時、僕はそんなこと信じていなかったがまさか本当だったとはな。
ただの猫たちが集まってニャーニャーと合唱している分には微笑ましい。でも、
「☆☆さんのおうちは喧嘩して離婚したんだって〜」とか
「♡♡ちゃん家は子ども生まれたらしいよ!お祝い行かなきゃ!」みたいに内容が分かるとちょっとどうかと思う。特に前者!どこから嗅ぎ付けた?
…今朝、母親に捨てられた。寝るとこを求めていたところ警察に怪しまれ逃げ込んだススキの森。そこで僕は
「猫の子供になった。」
「私はあなたを許さない」
そう言ってから離れて行く彼女が脳裏に浮かんだ。
起きていつものように写真を眺める。
愛おしい彼女はもう二度と戻らない。
どんなに話したとしても、…もう意味が無いんだよ。
何回謝られたって、弁解されたって。
私はあなたを許さない。