『痛み』
教えてくれよ
骨をとおりこして
一気に土に
なろうとした時
ぼくの胸の中心は
なぜか光満ち溢れて
たまらなく眩しくて
あまりに仕方ないから
いまはこうして生きてるんだ
君は涙をなくさないで
だから一緒にいてあげるって
訳わからない台詞と一緒で
それでいいからさ
抱きしめててくれよ
「夏の詩」
使われすぎて
炭酸の抜けたラムネみたいな
言葉を頭から浴びせるなよ
汗一粒の価値もない
生命が一気に重くなる
鈍重な足の季節の真ん中に
脈打つ血管までが這う心は
こんなにも肉体を
張り裂かんほどに膨張を始めて
生きようとしている
君も生きていれよ
喜びも哀れさも混ぜて
胸を叩けるのなら
燃えたミミズのうえには
光をはじいて水銀にした
名も知らない花が咲いて
明日あさってに灰になるが
いつかはここまで引かれている
紺色のおだやかな水平線よ
俺の足跡を押し流さずに
銘記しておいてくれ
やっと生きていることが
こんなにも楽しいと
思えてきたところだ
おおうと
低く叫びながら鈍重な足が
踏みつけてしまった
半分に潰れたセミの焼死体
「方角」
精工なはずだった
私の君の軸だけを
指す羅針盤は
君の一言で
脆くも狂って
馬鹿みたいな
海の真ん中で
独りぼっちだよ
「わかった」って
言えよ
海風がこんなに
塩辛いなんて
君の姿からは
想像できてるわけ
ないじゃない
『友達じゃなくて』
強い人こそ
誰にも守られず
ひとりで死んで逝く
今もずっと守りたい人は
友達でも仲間でも親友でも
いつかの未来のお嫁さんでもない
それは僕の困難に共に戦ったあの戦友だ
戦友だ。
『星降る夜を』
泣かずに目を覚ましたおまえを
抱えてそっと窓を開けて
星降る夜をひろげて見せる
おまえは潤んだ黒い瞳の奥に
いっぱいに満たしてくれ
大人になったとき
夜は二度と戻ってこない
朝がずっと来るだけだ
太陽がすべてをぎらぎら沸騰させて
すべてが眩しく輝いて見えてしまう
この世界の一点のどこかで
おまえも自身の価値を見つめ直す
その日にきっと苦しむ時が
来るのかもしれない
太陽の猛る光の日だとしても
お前の瞳の奥にあるものが
輝いていることを忘れて
自分を責めなくてもいいように
一生ものの今夜の星降る夜を
おまえの愛しい無垢な瞳に
わたしは捧ぐ