須藤 東

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8/20/2025, 9:09:33 AM

『痛み』

教えてくれよ
骨をとおりこして
一気に土に
なろうとした時
ぼくの胸の中心は
なぜか光満ち溢れて
たまらなく眩しくて
あまりに仕方ないから
いまはこうして生きてるんだ
君は涙をなくさないで
だから一緒にいてあげるって
訳わからない台詞と一緒で
それでいいからさ
抱きしめててくれよ

8/15/2025, 9:47:05 AM

「夏の詩」

使われすぎて
炭酸の抜けたラムネみたいな
言葉を頭から浴びせるなよ
汗一粒の価値もない
生命が一気に重くなる
鈍重な足の季節の真ん中に
脈打つ血管までが這う心は
こんなにも肉体を
張り裂かんほどに膨張を始めて
生きようとしている
君も生きていれよ
喜びも哀れさも混ぜて
胸を叩けるのなら
燃えたミミズのうえには
光をはじいて水銀にした
名も知らない花が咲いて
明日あさってに灰になるが
いつかはここまで引かれている
紺色のおだやかな水平線よ
俺の足跡を押し流さずに
銘記しておいてくれ
やっと生きていることが
こんなにも楽しいと
思えてきたところだ
おおうと
低く叫びながら鈍重な足が
踏みつけてしまった
半分に潰れたセミの焼死体



8/7/2025, 10:21:57 AM

「方角」

精工なはずだった
私の君の軸だけを
指す羅針盤は
君の一言で
脆くも狂って
馬鹿みたいな
海の真ん中で
独りぼっちだよ
「わかった」って
言えよ
海風がこんなに
塩辛いなんて
君の姿からは
想像できてるわけ
ないじゃない

7/27/2025, 9:48:03 AM

『友達じゃなくて』

強い人こそ
誰にも守られず
ひとりで死んで逝く
今もずっと守りたい人は
友達でも仲間でも親友でも
いつかの未来のお嫁さんでもない
それは僕の困難に共に戦ったあの戦友だ
戦友だ。

7/22/2025, 1:47:31 AM

『星降る夜を』

泣かずに目を覚ましたおまえを
抱えてそっと窓を開けて
星降る夜をひろげて見せる
おまえは潤んだ黒い瞳の奥に
いっぱいに満たしてくれ
大人になったとき
夜は二度と戻ってこない
朝がずっと来るだけだ
太陽がすべてをぎらぎら沸騰させて
すべてが眩しく輝いて見えてしまう
この世界の一点のどこかで
おまえも自身の価値を見つめ直す
その日にきっと苦しむ時が
来るのかもしれない
太陽の猛る光の日だとしても
お前の瞳の奥にあるものが
輝いていることを忘れて
自分を責めなくてもいいように
一生ものの今夜の星降る夜を
おまえの愛しい無垢な瞳に
わたしは捧ぐ

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