須藤 東

Open App

「夏の詩」

使われすぎて
炭酸の抜けたラムネみたいな
言葉を頭から浴びせるなよ
汗一粒の価値もない
生命が一気に重くなる
鈍重な足の季節の真ん中に
脈打つ血管までが這う心は
こんなにも肉体を
張り裂かんほどに膨張を始めて
生きようとしている
君も生きていれよ
喜びも哀れさも混ぜて
胸を叩けるのなら
燃えたミミズのうえには
光をはじいて水銀にした
名も知らない花が咲いて
明日あさってに灰になるが
いつかはここまで引かれている
紺色のおだやかな水平線よ
俺の足跡を押し流さずに
銘記しておいてくれ
やっと生きていることが
こんなにも楽しいと
思えてきたところだ
おおうと
低く叫びながら鈍重な足が
踏みつけてしまった
半分に潰れたセミの焼死体



8/15/2025, 9:47:05 AM