『幾億光年の叫び』
春を待っていたのよと
咲き誇った梅の花は
一枚とまた一枚と
折り鶴になっていく
ビル街がレモン色に
嘘をついて
ちょっと嬉しくなったけれど
闇を耳がやっと突き抜けた向こうの
もっと海の向こうで
孤独なシャチが
尻尾を海面に
叩きつけたらば
ふわりと姿を消していく
この地球から見れば
目を細めて
やっと見える
みんな微かな一等星だ
『毎日のはじまり』
季節を一盛り色付ける
花々の息吹のように
明日に人々が忘れてしまう
夜空のカシオペアのように
ぼくは少ない輝きを手にして
大きな光のつぶを
どこかに失くして生きてきた
嘘が見え透いている
風に吹かれて
すこし前髪を乱した君が
伏目のまま白い手で
ひたいをおさえたまま
告白してくれた君に
ぼくはそう答えた
針時計の無機物な黒い針は
実は香りを嗅ぐと
甘いのかもしれない
「なら私の持っている、
ぜんぶここに捨てる」
ぼんやりしていたぼくに
君はちょっと強くそう続けた
『いつかの僕はどこかの砂』
蟻が死んで砂をつくる
鳥が閃けば水面が光る
夏の風が橋を打って砕けば
その時だけは夜になる
降った雨が悲しみに混ざれば
やがて土になって朝日で固まる
暗い部屋でタバコを燃やせば
紫色の髑髏が耳打ちする
「君もいつかどこかの
綺麗な砂の粒であるのだ」
『亡霊』
死んだら好きになりましたって
君は言うけどそれはずるくない?
だったらすこし互いに
忘れ去ってしまうまで
君は生きれよ。
『ガラスの君』
数年前から
部屋の片隅に
ガラスの君がいる
窓辺に朝日が
カーテンの切れ間を縫って
君を光らせる
わずかな光の中で
ようやく君を抱きしめる
腕力を手に入れた
抱きしめた瞬間
君は暗い部屋に散らばった
『まもる』
僕らは勉強して知識をつけて
そしていろんな笑顔を学んで
僕自身の生命の重さに
足し算を繰り返してきたけれど
たとえばミツバチが
自分の肉体よりも
大きな体躯(たいく)の獰猛を
よってたかって囲い込んで蒸し殺す
ミツバチはその時
自身の生命の重さなど
ろくに考えもせずに
僕らは重さよりも
いつ僕らの生命は軽くなるのか
海は響くのか
瞬く星は泣いているのか
突きつけられたまま生きている