「アンドロメダ」
君も我が人生に於いて
出逢えない恋人なんだよ
君は私を知らないし
私は君の顔も知らない
相容れない恋人
例えば朝に私が生きているならば
例えば夜に君は生きている
アンドロメダの輝く孤独に
距離は関係ない
水平線が天に傾いたとしても
だからこそ君も生きていろよ
私が今そうであるから君も
「来た。」
弱いと思いこんで
生きて来たのでしょう
本当に弱いならとうに
私とこうして
生きて出会うことは
なかったでしょう
だからあなたに
私から交渉があります
私の持ってる泣く権利と
あなたの泣く権利を
およそ半分ずつ交換しましょう
そうすればあなたも私も
公平に泣き合えると思いますから
本当に
「君を想って書いたバラード」
「空に向かって」という歌を
きみのためにつくったんだよ
歌うことが好きだった
君を思って書いたんだ
歌詞の
(眩しいひかりペルセウス)
それが君
歌っていると
五線譜の向こうに君が見えてくる
私は歌っている時にだけ
遠くの君と近くで会える
だからこの歌は この魔法は
とても大切にしているんだよ
だけど五線譜の向こうの君は
何度歌っても
私の告白を両手で返してくれた後の
暗い君
「愛してる」
君に贈るいろんな色の
またね!をつくったよ
だけど時間が経つと
ぜんぶ名の無い色の
「愛してる」になった
『Good bay』
思い出はもう
一言くらいに
とどめておいて
小さな紙に
記しておいて
私たちの中にあるでしょう
涙がつくった砂時計に
二つ折にして入れておく
時が経って
思い出したら
朝と夜を
さかさまにして
茫洋な明日を眺めましょう
そのとき砂の滴る潮の音が
私たちの思い出を
すこしずつでも
渫(さら)っていくと思うから
時が経っても
思い出すことがないのなら
私たちは
生きていけると思うから
『猫』
南に向かって大きく
欠伸をしていた君が
私に気が向いたのか
気怠るげに寄ってきて
真っ白な毛並みの揃う
靱やかな体を
私の足に触れさせた
懐いてはくれているみたい
だけどいつも一緒にいるのに
君が本当に幸せなのか
もっときれいな幸せを描いているのか
人である私にはわかってあげられない
だから今日も君の小さな頭と
ミツバチのような小さな耳
それから背中まで撫でてあげる
君が飽きたと立ち去るまで
生きてきていっぱい
頭を叩かれた私は今日も
撫でると蕩けて
甘いスライムになっている君を
今日も撫でてあげる
撫でてあげる