『胸が高鳴る』
「あなたの書くお話が好きです」
SNSで知り合った、うんと年下の友人は、大切なことを打ち明けるみたいにその言葉を言ってくれた。
誰かにとっては取るに足らないことかもしれない。
でも、心の柔らかいところがありがとうって叫んでいた。
胸が高鳴る。
『不条理』
世の中は、不条理だ。
努力は報われないし、正直ものが馬鹿を見る。
それでも、だからこそ、ハッとするような奇跡がごくまれに目の前に現れる。
例えば、僕と君との出会いみたいな。
『泣かないよ』
君と永遠にお別れしなくてはならないと分かった時、僕はとてつもなく絶望したんだ。
だけど肝心な君の方は、僕を気遣って笑っていたね。
会えなくなってもあなたの心の中で生き続ける、生かしてちょうだいと笑って言ったね。
いなくなってしまった人の意思を想像して心の拠り所にするのは、残された人のエゴだと思う。
それでも君が願ってくれたことはほんとうだと信じたくて。
君が伝えてくれたことを食べて、生きていくと決めた。
だから、泣かないよ。
『怖がり』
彼が僕より怖がりなのは知っている。
だけど怖がる様子を僕に見せないようにしているのも知っている。
「好きな子の前で格好つけたい」なんて、何気なくこぼしたことを僕は忘れられないし、彼のプライドに、実際に守られてきたのは紛れもない事実だと思う。
だからさ。
怖い映画を観る時くらいは、強がらなくていいよ。
そっと手を握るとちょっとびっくりしたみたいにこちらを向いた。
僕が自分からスキンシップを求めることは少ないもので。
「……こうすれば、心強くないですか」
誰が、とは言わずにそう告げると、隣でふっと小さく笑う声が聞こえた。
『星が溢れる』
ずっと不思議だった。お前の瞳はキラキラしてる。どうしてだろうって。
今日、愛してるよと告げたら気付いたんだ。
瞳の中に星がたくさんあることに。
「僕もです」
お前が言った瞬間に、瞳から星が溢れ出した。