『怖がり』
彼が僕より怖がりなのは知っている。
だけど怖がる様子を僕に見せないようにしているのも知っている。
「好きな子の前で格好つけたい」なんて、何気なくこぼしたことを僕は忘れられないし、彼のプライドに、実際に守られてきたのは紛れもない事実だと思う。
だからさ。
怖い映画を観る時くらいは、強がらなくていいよ。
そっと手を握るとちょっとびっくりしたみたいにこちらを向いた。
僕が自分からスキンシップを求めることは少ないもので。
「……こうすれば、心強くないですか」
誰が、とは言わずにそう告げると、隣でふっと小さく笑う声が聞こえた。
3/16/2024, 9:47:37 PM