零時
少し霧がかっていて
空は黒い幕をひいたような曇天だ
目の前にある街灯だけはやけに明るく
周囲の闇と自分だけが、他に存在しているようだった
孤独。固結び
六時
雨。
灰色の空の少し下。
せかせかと動く傘がひとつ、ふたつ。
大気もまだ寝ぼけているような柔らかい雨の匂いが
残酷に、平等に、今日が来たことを伝える。
七時
青が覗いた。
いっとき雨はやんで、それまで分厚そうに威厳を放っていた雲も、今はもう明かりを引き立てる前菜になりつつある。
人は、雨が止んだので手荷物が増えている。
傘、携帯電話、財布、レシート、ティッシュ、自由、責任、夢。
おじさんは忘れ物を取りに走ってるみたい。
十時
思い出したように雨が降り出した。
でも空は青いまま。
笑ったまま泣いた君を思い出す。
雨粒は光を反射し、わざとらしく輝く。
後悔、陸橋、狐の嫁入り。
電気を消してもスマホを触るし
死にたいと言いながら洗濯物を干す
君の見た夢の中の僕はどんな顔して何を言うんだろう
それは僕なのかな
もう終わらせたいと言う
枯れた草を土に植え、水をやることが優しさで
枯れた草は怯える
上か下かもう分からない
ずっと踏み出せなかった世界
この時間が永遠に感じる
やっと終わったんだ こわい
風の音がうるさい
震える。寒い お
人生の今までがよみが ち
おしまい
「星になる」
シャワーが嫌いだ。
流れていく。彼の匂いと幻想が。
嘘みたいだ。全部。
こうなることは分かっているのに。
「ありがとう。気をつけてね。」
車が離れてゆく。
手を振る。
結局、また会ってしまったな。
彼の1番にはなれない。
分かってるのに、思い描いてしまう。
あのまま車に乗って、同じ家に帰る日々を。
私が悪いんだきっと。
彼は苦しまなくていい。
笑顔でいて欲しい。
あの人とはずっとお幸せに。
嘘だよ
夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょ
夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょ
「遠い鐘の音」
クリープハイプ、「キケンナアソビ」に誘われて
「シアター」(夜空を越えて)
朝起きて、コーヒーを淹れる時と、映画館から出る時は似ている。
空想や夢の中にいた自分の思考が、緩やかに現実へ引き戻されるから。
シアターが明転して、映画館にいる私へと視点が動く時間。
さっきまで幸せそうに笑う主人公はそこに居なくて、それを見届けた自分だけ現世に取り残される。
それまでの星空が真っ白なスクリーンに変わる。
マグカップを持ってリビングへ。
リビングのテレビからは凄惨な世界情勢とか、節約レシピとかが雑多に流れている。
コーヒーを飲み干す。
脱ぎっぱなしだった上着を着る。
今、フォーカスは私に向いている。
もう星は見えなくても