『風が運ぶもの』
誰からも忘れ去られた砂浜に
いつか必要とされていたものが流れ着く
こんなにも静かな海では
叫んで、叫んで、叫んでも
何にも返ってきやしなくて
泣いて、泣いて、泣いても
誰も気づいてやくれなくて
けれど確かに私はここにいて
未だに何かを待ち望んでいて
『question』
以下の問いをよく読み、可否を答えなさい。
Q1,後悔はできましたか?
Q2,家族は仲良くあるべきだと思いますか?
Q3,人を好きになることは良いことですか?
Q4,人を嫌いになることは悪いことですか?
Q5,人を恨み憎むことは正しいことですか?
Q6,他人の気持ちは理解できるものですか?
Q7,人々はお互いを分かり合うことができますか?
Q8,間違いを正すことは必ずしも正しいことですか?
Q9,私は正しいですか?
Q10,私は間違っていますか?
『魔法』
天使にも似たあなたを、模倣する
言葉に溺れ、笑顔を貼り、生活を濁らせる
悪魔にも似たあなたを、模倣する
品性を踏み、怒気を携え、愉悦に横たわる
干上がる悲しみすらも寿ぎと見間違えて
軋轢の上で正義を冠する呪いを愛しては
やけに甘い泥水を吐き出しながら啜って
痛み止めにも満たなかった憎しみすらも
いつまでも、いつまでも唱え続けている
『夜空を駆ける』
忘れないで
鉄塔の横を落ちていった流れ星の呼吸を
忘れないで
月の裏側に手を伸ばした瞬間のビル風を
忘れないで
凪いだ海を飲み込んだ夜空の騒がしさを
忘れないで
凍えまいと身を捩らせる雑草と空き缶を
忘れないでいて
涙が私を忘れた時
きっと、きっと思い出さないでいて
『時間よ止まれ』
時計の針を指で重ねて、魔法を解いていく
歯車に振り落とされた人々の少し甘い涙は
錆を舐めるような聖歌をうたい続けたまま
焦げ付く匂いは乾電池の電極を間違えさせ
端っこにこびり付く永遠を醜くも奪い合う
ゆっくりと、ゆっくりと魔法は解けていく
止まった時間の中で私は何を後悔できるのだろうか
止まった時間の中で私は何を信じられるのだろうか