淡時間

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12/26/2024, 1:34:40 PM

『変わらないものはない』

絆創膏だらけの部屋と汚いカーテン

埃を被った何かの箱と破いた袋

いつか当たり前になるのだろうか


錆び付いた蛇口と動かない秒針

甘い匂いの残る植木鉢

いつから当たり前になっていたのだろうか



あの花瓶に罅が入る瞬間

あなたはなぜか泣いていた


造花で溢れたこんなものでさえ

いつか当たり前になるはずだったのだろうか

12/25/2024, 12:55:48 PM

『クリスマスの過ごし方』

買ったばかりの小説

買ったばかりの手帳

買ったばかりのバッグ

買ったばかりのカメラ


目眩がするのも

動悸がするのも

耳鳴りがするのも

きっときっと

街がまぶしすぎるから

私にはまぶしすぎたから

12/23/2024, 1:24:00 PM

『プレゼント』

私とあなたは違うのだから

私が私のままできることを

私のこの手が届く範囲で

私自身の価値の証明として

私は私を誇り救い続ける


いつか噛み締める幸せの為に

いくらでも自分の踏み台となって

大人の自分への贈り物としよう

12/19/2024, 3:18:33 PM

『寂しさ』

ふと、思う

入浴剤のように私も溶けることができたのなら


この気持ちごと全部湯船に溶かしてみる

あまりにも多くて浴槽を溢れ出てしまった

気持ちも 私も 記憶も 価値も 全部

全部全部全部混ぜてしまえ

混ざりきったら捨ててしまおう

栓を抜いて忘れてしまおう


あなただけに知って欲しい私がたくさん、いた

あなただけに知って欲しい事がたくさん、あった


詰まっている排水口だけが音をたて、泣いている

12/16/2024, 4:31:12 PM

『風邪』

目が覚めてしまった

じぐじぐ、と刺されるような痛み

ああそうか、この映画が煩かった

絡まったビデオテープを壁に叩きつける


コップに残ったコーラを飲み干す

どくどく、と濁った空気が全身にまわる

窓を叩く冷たい風と子羊にも似た雲

怖くて恐ろしくて寂しくてからだを覆い隠す


視界の隅が暗くなる頃

ようやく私は空に手を伸ばせた

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