『意味がないこと』
前を思い出しても
空に迷い込んでも
海を見渡しても
花を見下ろしても
昔に思い馳せても
ないものはなくて。
『あなたとわたし』
あのね
なんかね
なんにもね
おそろいにね
なれなかったけどね
やっぱりね
それでもね
いいっておもってるの
ずっとおもってるの
『柔らかい雨』
あとどれくらい耐えたら叫んでいいかを知りたい
あとどれくらい耐えたら逃げていいかを知りたい
あとどれくらい耐えたら泣いていいかを知りたい
寒くて心細くて視界が悪くて気持ち悪くて
傘を持つ手だってもう震えてる
雨の強さとか風の向きとかはどうでもよくて
やんだ後の快晴のことなんて知らないし
その後できる虹だとか水溜まりだとか
やまない雨はないことを自慢げに話されても
今降るこの雨を、どうにかして欲しい。
どうにもならないのなら、それを教えて欲しい。
後ろのポケットのハンカチに
ほんの少しだけの気持ちを滲ませておく
滴って他を濡らさないように
いつまでも傘を投げ出す決心ができない。
『一筋の光』
縋りたくなっちゃったんだ?
自分には何も無いと思ったのでしょう?
これを逃したらお終いだと思ったのでしょう?
怖くなっちゃったんだ?
貴方にはこれが光に見えたのでしょう?
翳りが見えてしまうのが嫌なのでしょう?
私に自分を重ねちゃったんだ?
苦しくて悲しくて恐ろしいのでしょう?
逃げたくて泣きたくて消えたいのでしょう?
いいよ。もう。
欲しい言葉だけあげるよ。
貴方だけが得できるようにしてあげるよ。
今日も頑張ったね。おつかれさま。
また来てね。いつでも待ってるからね。
『哀愁を誘う』
ほんのすこし、ほんのちょこっとだけ
もの悲しい うら悲しい
私は悲しいの?
悲しい?
悲しい?
大丈夫。やめろ。
辛くない。やめろ。
苦しくない。やめろ。
生きてゆける。やめろ。
私は生きている。やめろ。
正解にしてゆける。やめろ。
謝罪も感謝も不要だ。やめろ。
やめてくれよしてくれ。やめろ。
もう話しかけないでくれ。やめろ。
もう目も合わせないでくれ。やめろ。
泣いてなど いない。やめろ。
怒ってなど いない。やめろ。
やめろやめろやめろやめろやめろやめろ。
二度と悲しくならない。絶対に。やめろ。
無かったことには、ならないのだから。
気持ちは絶対に、踏み入らせてはならない。