【海へ】
仕事を終えた僕は先輩を連れて、近くの海へ来た。
夏が終わり、少し肌寒い季節に変わり体調を崩しやすい。
「…好きです。」
「知ってる。」
「付き合ってください」
「…別に、いいよ、」
顔が赤いのは、肌寒いからなのか分からないけど
その小さな身体に腕を回し包み込む。
「…体温、高いな」
「厚着越しでも、伝わるもんなんですかね?」
【裏返し】 ※あるドラマを元に
「先生!一緒に昼食食べる約束したじゃないですか!」
「うっさい。あんな人混みん中、行きたきゃねえよ。」
僕はあの二人の関係を知らない。
元指導医と研修医、ぐらいしか知らなかった。
でもやけにあの二人の距離が近い。
僕の心臓は、締め付けられるような痛みを最近覚えた。
「楽しそうだね、僕も混ぜてよ」
君たちを見ていると、
得意の笑顔が出来ているか不安になるよ。
【空模様】 ※あるドラマを題材
僕の尊敬する医者がここを去ってから二年経った。
未だに忘れられない、あの顔に性格に声に行動に。
あの人は多くの患者を救ってきた。
あの人は多くの医者を殺してきた。
早く会いたい。でも居場所はわからない。
あの人は、すぐに消えてしまうような儚さを持っている。
不意に煙草の匂いがした。
…そうだ、あの人の実家に行けば居場所は分かる。
そう思い立ったとき、あの人に似た誰かが横切った。
【心の健康】 ※医療関係、あるドラマを元に制作
「医者は体調管理や精神の管理も仕事の内ですよ!」
「…はぁ、なに研修医が指導医に指図してんだ」
新しく俺に研修医がついた。
こいつもすぐ辞めていくんだろう、そう思っていた。
ーだが、10年近くが経った。
「先生、この資料に目を通してサインください」
「…なに?もう俺はお前の指導医じゃねぇけど?」
「あっはは、そうでした。《恋人》でしたね。」
【麦わら帽子】
「今日、30℃超えてんだけど…」
「暑いですけど…水分やらタオルを持ってきましたよ!」
「俺が休みをいいことに、外に連れてきやがって…」
いつも外に出ていない僕の仕事場の先輩。
今日は天気がいいし、ずっと一緒に行きたいところに
連れていくことに成功した。
「…ひまわり畑、ねぇ…」
「はい、ずっと先輩と一緒に見に来たかったんです」
そう言って持ってきた麦わら帽子を先輩に渡した。
素直に被ってくれた先輩は、どこか儚さを感じた。