【お気に入り】
お気に入りの香りはいつも君の元からだった。
この香り、柔軟剤なのか香水なのかはわからない。
僕は君からするその香りが大好きでお気に入りだった。
でも、その香りは君の彼女のものだったこと知った今。
絶望や嫉妬、悲しみや苦しみでいっぱいだった。
僕のお気に入りの香りは、君の彼女の香りだった。
とでも言うのだろうか。
【誰よりも】
「おい、いい加減にしろ」
「自分勝手だろ俺。でも今回はガチで許してねぇよ?」
些細なことで喧嘩をした。
でもそんな些細がこんなにも大きな喧嘩に導かれた。
昔からの友達。言うて中学生くらいからの付き合いだ。
気付けば、隣にはいつもお前がいた。
誰にもあげたくなかった、そんなお前が。
来月、結婚することになった_。
【旅路の果てに】
疲れた。うん、疲れた。
これは紛れもない。疲労だ。
特別、隣にいてくれる人はいない。
自分は独りなんだって思う。
でも、時間が経てば明日は来る。
カーテンから差し込む光に、嫌気が刺した。
【あなたに届けたい】
「お、いい感じの曲ができたな」
音楽活動をしている僕は、今回は失恋をテーマにしてみた。
早速、君の隣で弾いて聴かせようと思い立ったとき。
もう君は隣にいないことに気づいた。
「…そうだった、一週間前に別れたのか、」
“音楽ばっか”に目を向けないで。と。
この歌が配信されたら、こっそり君も聴いていないかな。
この歌は君にプレイリストに入ってくれるかな。
【ミッドナイト】
「なんか、今日は上手くいかなかったな…」
君は今日一日した選択を後悔しているようだった。
「まぁ、どうせもう過去のことだろう?」
「昨日のことをもう過去に入れるな」
君と肩を寄せ合ってソファーでただ会話をする。
時々話すことがなくなる時の沈黙が妙に愛しかった。
君と今年、初めての夜ふかし。
ミッドナイトを過ごした。