風待

Open App
7/1/2024, 2:51:54 PM

曇りガラスの奥の道
揺らりと揺れる黒い陰
漏れる街燈、光の前に
今夜も貴方は佇んでいる

「おかえりなさい」
毎晩零れる同じフレーズ

それでも貴方は何も返さず
ただ開けてくれと言わんばかりに
窓越しに強い視線を私に送る

とても律儀で優しい貴方
私の言葉を零す事無く
1つ残らず掬う貴方が
「ただいま」
一言無いわけがない

馬鹿をするのはお止めなさい
曇りガラスで濁りとも
本物見抜けぬうつけではない

戻らぬ貴方に成り済ますなら
声の一つも真似てみなさい
帰らぬ旦那に成り済ますなら
もっと上手に現れなさい

それでも私は見抜いてみせる
だってお前にはないのだから

私の愛する熱い視線も
愛の籠った優しい言葉も
生気の宿ったあの気配も

窓越しに見えるのは
影だけだとは思わないことね。

6/30/2024, 2:51:43 PM

ぽつりぽつりと言葉が零れた
私の指に纏わりつく青色の糸に嫌気が差す
糸の先には嫌いなあの子

いつも笑顔で明るくてクラスの中心
教室の掃除用ロッカーの前で縮こまる私とは違う
キラキラとした指先に長い睫毛
少しだけ曲がった首元のリボンに膝丈のスカート
お気に入りなのかいつも猫柄の靴下を
軽い足取りで履きこなすしなやかな足

全てが大嫌いだった

どんなに遠くに居てもこの青色の糸は
彼女の居場所を示してしまう

私の小指とあの子の小指が
何の運命でもない関係を示してしまう

羨ましい輝かしい
とても綺麗で美しい
ただそこに居るだけで華やかで
儚くて強くて可愛らしい
大好きで妬ましい
憎たらしいあの子

今日もきっと貴方はあの人に逢いに行くのでしょう
薬指に繋がる赤色の元へ
貴方の愛するあの人の元へ

この青色の糸が何を表しているのか
あの赤色の糸が何を顕しているのか
その全てを理解したあの時

私はあの子の全てが大嫌いになった
あの子の愛するものもあの子の目に入らない自分も
嫌いになりきれないあの子の全ても
赤色も青色も全て全て