拝啓、10年前の私へ。
元気ですか?なんて、今聞く事じゃないよね。
ずっと好きだった人に想いを伝える前に、好きだった人にはまた別の好きな人がいるなんて友達から聞いて。
もっと早く行動していれば、可愛くなろうって努力していればとか。どうしようもないタラレバを吐いては涙を流す日が続いていたね。
もうあの人以上に良い人なんて居ないんじゃないかって、私は幸せになれないんじゃないかって。そんなことばかり考えては落ち込んでいる毎日でした。
けど安心して大丈夫だよ。もう少ししたら、貴方の隣に、心の傷も涙も笑顔もまるまる愛してくれる人が現れるから。運命なんて非現実的な言葉を信じてしまうほど素敵な人です。
拝啓、10年前の私へ。
大丈夫。前を向いて。きっと幸せが待ってるよ。
私は今日、運命を運んでくれた彼の名字を貰います。
これからもずっと、ずーっと。貴方と私の未来が輝いていますように。
10年後の私より。
ー あの頃の私へ ー
目が合ってしまった。
(やばい、)
直感でそう感じた、この人に囚われては戻れなくなる。
でももう手遅れだ、このまま堕ちても良いかもしれない…なんて考えるほどには貴方という存在が近くなっていた。
だめだ、この気持ちから、君から。私は絶対に
ー 逃れられない ー
いつもの帰り道がやけに早く感じるのは。
普段目にも止まらない道端の花が綺麗だと感じるのは。
うるさいとヘッドホンで塞いでいた子供の遊んでいる声が、楽しいBGMに聴こえるのは。
こんなにも帰りたくないと思えたのは。
全部全部君が隣にいたから。
だから魔法をかけて、明日も私の世界を彩って。
ー また明日 ー
「好きだったんだ、ずっと。」
そう言って滅多に泣かない彼女が涙を見せたのは、ここ最近で一番驚いた話。ずっと恋愛相談にのってた身としては、そうだよね、辛いね。なんて寄り添って一緒に涙を見せるくらいしなきゃいけないんだろうけど。
そんな奴の為に泣かないでよ。
私の口から出たのは180度真逆の言葉。しょうがない、彼女を手にできるチャンスだったんだもん。
君は綺麗だから浮気なんてするような奴に汚されて欲しくないし、君は素直だから。最低野郎の為に、ガラスのような涙を流すなんてもったいないよ。いつか消えてしまいそうな彼女を精一杯で繋ぎ止めて。
私がいる。まだここが君の居場所だから。
なんて。
あ、雨が降りそう。
ー 透明 ー
道で困っているおばあちゃんが居たら助けますか。
漫画とかでよくあるシーンだと思う、けど実際目の前にしたら動けない私がいた。
声をかけてウザがられないかな、とか、人を不快にさせない行動がわからなくて、結局躊躇ってしまうのだ。
「大丈夫ですか?」
行き交う人々が、誰かがやるだろうなんて考えで通り過ぎる中、彼だけが声をかけた。
あぁ、私はその小さな暖かい優しさが大好きなんだ。
ずっと変わらないでいてね、私の好きな人。
ー 理想のあなた ー