『いつまでも降り止まない、雨』
「雨……やまないねぇ」
「やまないねぇ」
「いつまで降るんだろうね」
「いつまでだろうね」
「これじゃ出かけられないや」
「出かけなくていいんじゃないかな」
「……お腹減ったなぁ。ごはんにしよ!」
「そうだね。それがいいよ」
そうしてきみがおなかいっぱいになって、
眠ってる間だけ、雨が降り止む世界のおはなし。
***
雨が降ってるから外に出たくない、
なんて言い訳をずっとしている。
それを許してくれる世界は
私に甘すぎると思う。
けど、その甘さがなければ
とっくの昔に朽ちていたろうな、とも思う。
甘さに生かされている。
(※世界といっても、本当に広い世界のことでもあれば
身のまわり、見える範囲知れる範囲だけが世界、ともいえる。)
『透明な水』
綺麗だな、と思った。
触れようとしたら、それは危険だと怒られた。
触れてはいけないらしい。
納得がいかなくてうなっていたら、
何かを見せてくれた。
そして、それを水の中に落とす。
それは、じゅっ、と音をたてて溶けた。
これは確かに危ない。
教えてくれてありがとう。
礼を言って別れたけど、今になってふと思う。
あれは水が特別だったのか、
それとも、その『何か』が特別だったのか。
『真夜中』
いつの間にか日付が変わっていて
次の朝のリミットが迫る。
もうそろそろ、眠らないといけない時間。
起きていてはいけない時間。
昼間の時間を生きるのなら
昼間の時間に生きたいのなら
眠るべき時間を間違えてはいけない。
慣れてはいけない。
もどれなくなってしまうからね。
『愛があればなんでもできる?』
“愛があればなんでもできる”
そう思えるのは、素敵なことだなぁ、と思う。
だから、否定はしないよ。
でも、だからこそ、利用されやすい言葉だと
自覚したほうが良い、とも思う。
“なんでも”なんて言うのは、
悪魔にとっても、美味しい美味しい餌なのだから。
ぼくは、“できることしかできない”よ。
……夢がなくて、ごめんね?
『後悔』
忘れられない過去のワンシーンを、
何度も何度も繰り返し思い出す。
いつか、今思い出す後悔よりも
ゾッとするような後悔もしそうな気がする。
過去にも未来にも後悔の種は散りばめられていて、
探し始めたらそこに囚われるから、
そこから離れるように、忘れるように、
今はとにかくねむらせて……