睦月

Open App
6/5/2023, 10:37:34 AM

『誰にも言えない秘密』

誰にも言えないから

誰にも言わない

墓場まで持っていく

6/4/2023, 1:12:41 PM

『狭い部屋』

錆びた鉄の扉
円形でくすんだ金属のノブを回す

重たそうに見えた扉は
意外に軽く開いた

そこからさらに
くるりと螺旋階段が続いている

ひんやりとして 気持ちいい

螺旋階段を降りていき
一番下までたどり着き
足をつくとそこは
唖然とするほど狭いスペースだった

薄暗い部屋の片隅に目をこらすと
床に膝を抱えてうずくまっている
小さな女の子が居た

声を掛けると
顔を上げてこちらを見た

その顔には
見覚えがあった

紛れもない
幼い頃の私だ

感情のない虚ろな目
顔色も青白く
まるで生気が感じられない

私は思わず
ぎゅっと抱きしめた

幼い頃の私もしがみついてきた

体の奥がきゅんとなり
胸がいっぱいになった

涙が止めどなく流れ

気付くと2人で
声を上げて泣いていた

私 ただ 抱きしめて欲しかった
私 ただ 寄り添って欲しかった
私 ただ ずっとこうして泣きたかった

狭い部屋の片隅
2人の私は
ただ 大声で泣き続けた

泣き疲れて 眠る
その瞬間まで

ただ
抱きあって
大声で泣き続けた

ただ…ただ…

6/3/2023, 11:05:11 AM

『失恋』

人波の中でいつの日か偶然に
出会えることがあるのならその日まで…

「さようなら。」僕を今日まで支え続けてくれたひと
「さようなら。」今でも誰よりたいせつだと想えるひと

そして
何より二人がここで共に過ごした日々を
となりに居てくれたことを僕は忘れはしないだろう

「さようなら。」
消えないように…
ずっと色褪せぬように…
「ありがとう。」

SMAPの「オレンジ」という曲の
この部分が好きだ

そう言って キミは
よく口ずさんでいた

あの頃 僕は
まるで自分たちの未来を
予言しているようで
とても不安になった…

久しぶりに行った同窓会で
これまた久しぶりに会ったキミは

すっかり大人の女性になっていた

「じゃあ またいつか。」

まるであの頃 何もなかったかのように
キミは 別れ際に
笑顔でそう言った

僕は それには答えず

たった一言

「ありがとう。」



6/2/2023, 12:22:28 PM

『正直』

あなたは 嘘をつくと
口が 米の字みたいになる

結婚も 子供も
自然に季節を重ねてゆく中で

あ 今なんだな

みたいな感じで
選びとれるものだと
思っていた

正直
何度もはぐらかした
「大事な話」

それはプロポーズ
だったのか

心がわりを
告げたかったのか
もうわからないけど

許してくれると

待っていてくれると思ってた

大好きだったのに

都合のいい
愛し方しか
していなかったのかも知れない

あなたが 他の娘を好きになるのも
無理ないね

結局 私
自分のことしか
考えてなかったかも知れない

一緒にいられてうれしかったけど
世の中 なかなか
ままならないものね

ごめんね

あなたに
苦し紛れの嘘までつかせて

独りよがりな私に
あなたは 最後まで優しかった

ありがとう

さようなら

6/1/2023, 12:39:31 PM

『梅雨』

ママに買ってもらった
お気に入りの
傘と長靴
雨が降るのを
楽しみにしてたのに
まさか
あんたの
薄汚い血で
汚されるなんてね
でも まあいいわ
天気予報は
梅雨入りだって
運良く 雨も降ってきたし
だいたい あんたみたいな
幸薄そうな女
彼には不似合いなのよ
少し優しくしただけで
親友面して バカじゃない
ようやく彼は私のもの
あんたが着るはずだった
ウェディングドレスは
私が代わりに着てあげる
大丈夫よ バレやしないわ
だって私達 
親も見分けがつかないくらい
そっくりな双子でしょ
それじゃ バイバイ
お姉ちゃん

Next