#75 「またね!」
また、といえるほど
あの場所に思い出があっただろうか
それでも桜は咲いているし
私はあの場所を今でも覚えていた
またね!
また、いつか会えたら
私は笑えているだろうか
#74「透明」
それは清々しいほどに訪れた
花は透いていた
わたしが溶け込んだ風景
離れなければ 行けないから
散った桜の下で わたしは空気になれる?
いいや むしろ
宙に浮いてしまいそうだ
訪れて初めて
あそこが私の居場所だったと
気づいてしまって
あっ、
怖いくらいに美しいや
それは清々しいほどに訪れた
花は透いていた
#73「秘密の場所」
口の中で眠れ
私のこどもよ
私を「未来」と崇める者共よ
その日がくれば 眠れよ眠れ
眼をついばめ
私を空へと誘う者よ
私を「今」と崇める者共よ
その日がくれば 空へと飛び立つのだ
死を笑え
私はそのためにいるのだ
私を「過去」と崇める者共よ
その日がくれば 私が見送ってやろう
私はここにいる
私を覚えていないだろう
しかし 未だおまえを覚えている
来世の果てに また会おう
#72「cute!」
Don’t get cute with me.
わかれましょ
とっても「cute」なあなた
眠りにつく前
わたしの頬を撫で「cutie 」といった
キュートで可愛い黒猫ちゃん
私からみたら あなたもそうよ
コソコソなにをやってるの?
私の手を離さないと誓ったあなたは
町中の女のハートを掴んでいるの
「まるで紳士ね、あの方は」
スマートな殿方は浮気性
でも残念 あの人は私の物
手綱を引けるのも私だけ
嗚呼 やっぱり別れられない
子供みたいに魅力的
気取り屋で ずる賢い
ほんとにキュートな子猫ちゃん!
#71「あなたは誰」
放射線状に分散した光のなかで
闇の記憶が眠っていた
ソーシャルネットワーキングサービスに
ありもしない寝床が広がっていた
電話のなかで笑ったあなたとは
ボイスレコーダーのなかで過ごしたい
所詮ヒトは動物で
バベルの図書館に記録されている
すべて失われたものが
すべて存在する場所があるならば
そこにきっと君がいたのだと