#39「明日世界が終わるなら」
え、終わるの?
うん、終わるらしい
そうやって言い合える人が最後にいたらな
愛よりお金っていう人がいるけれど、
世界が終わる時、お金なんて価値がなくなるんだ
わかっていたのなら、君の手をとったのに
明日世界が終わるなら
願わくば、もう一度あの観覧車で
愛を
#38「風に乗って」
たった数秒で通り過ぎた綿毛など
きっと誰の記憶にも残らない
けれど、私はもしかすれば
誰かの故郷の綿毛かもしれない
その誰かは寂しさを抱えているかもしれない
嗚呼 まだとべる
まだ あなたの所へゆくまで
あなたの心に 花を咲かせるまで
だからきっと、覚えていて
#37【何もいらない】
あぁ、とても、綺麗だなぁ。
テレビをつけると、屋上のLIVE映像が
映し出されている。
カメラマン不在のカメラは、画面いっぱいに
燃え盛る空を映し出していた。
誰もいなくなったテレビ番組は続いている。
これは、私たちの人生が終わる合図なのだ。
何も、いらなかったのかもしれない
平日10%offのクーポンだとか。
買いだめしておいたトイレットペーパーだとか。
趣味とか、資格の本だとか。
どこにも挙げることは無いのに、
なぜか撮ってしまった隕石の動画とか。
結局ぜんぶ、無に還ってしまうんだ。
わかっているのに、最後まで捨てきれなかったな。
戦隊ヒーローの、ビームみたいな光線の光が
閉めたシャッターの隙間から漏れ出ている。
まるで映画のワンシーンみたい。
みたい、だったらな。
シャッターから背を向け、ワンルームに向かい合う
そこには、自分の生きた証。
そこら辺に散らばったゴミも。
畳み掛けの洗濯物も。
もう随分と使ってないノートパソコンも。
どれも、終わってしまう世界には必要のないもの
しかし、この世に生きていたことを証明できる
大切なものなのだ。
唯一の光源である、テレビの電気が消えた。
スマホの充電は1%になっている。
そのまま、イヤホンをつけて
適当に音楽を流す。
歌詞も分からない洋楽ロックが、途切れ途切れに
言葉を紡いでいた。
ボリュームを最大にしても、隕石の轟音は
鳴り止まない。
その雑音が聞こえないように、自分も
カタコトの英語を叫んでみた。
『My Life!My Life!...but I still wanna live!』
シャッターから漏れ出る光が
徐々に大きくなってゆく。
点滅したスマホは、最後のサビを抜けたあとに、
力尽きたように光を失った。
最後に見えたのは
10年間住んだ、ワンルームにうつる自分の影。
額のなみだを拭くことはなく、
ただその部屋を見つめて、無理やり口角を上げる。
あぁ、とても、綺麗だなぁ。
#36【桜散る】
葉桜になる前に、桜は思いを残してゆく。
ちり紙より透いた花弁を、そして思い出を。
散ったあとの、その潔さを。
伸び伸び生きる姿を。
葉桜になる前に、僕は何を残せただろうか?
#35【届かぬ想い】
一番は叶わぬ二の星
どうしようもなく 僕らは彷徨う
願いごとは落ちてゆき 落ちてゆくから
叶わぬのだ
泡を吹き出して立ちのぼった その詩を聴いて
きらきら星は海の底 一生懸命歌います