夕暮れが
僕の前に影を作っていた。
集合住宅の共用ライトが一列に点灯して近眼の瞳にはなんだか幽霊のようにまどろんで見えた。
振り返ると眩しい茜色が僕の視界を染めていく。
日が沈む。街が沈んでいく。
僕はその場で立ち止まったまま俯いて、しばらく夕暮れの前に立っていた。
[たそがれ]
毎日を同じにしたいのは自分自身じゃないか
何も変わらない日々だ、と決めている自分がいる
本当は少しづつ何かが変わっている
不幸に酔いしれて本当に嫌な事は見ようとしない
誰かと比べるより自分ともっと話さないと
気づかないまま、きっと明日も
[きっと明日も]
やってしまった。
皆がこっちを見てる!
見世物じゃないぞ、誰か何か言ってくれよ
さっきまであんなに騒がしかったじゃないか!
そんな事を思って、絞り出して喋りだす前に息を呑んだ音がやけに大きく聴こえた。
[静寂に包まれた部屋]
過去の走馬灯が流れていった
記憶の断片が頭の中にフラッシュする
彼女も僕に呆れて消えてしまうんじゃないだろうか
後何秒か、口から出る言葉が恐ろしくてたまらない
今日、あの時、もしかすると、怒らせてしまっただろうか。
じゃあ、またね!
ヒラヒラと手を振る彼女を見ると、
ホッとして手を振り返した。
[別れ際]
本日は曇り。体温36℃。予報は通り雨です。
ああ、嫌だな。雨が降ると手荷物が増えるから。
早く過ぎ去ってくれればいいんだが。
この一週間の予報はずっと雨ですよ。
たまに晴れるんですけど、最近は冴えないですね。
ほらまた降ってきた。きっと通り雨です。
何が楽しくてずっと雨を降らすんでしょうね。
僕は雨好きですよ、雨の楽しみ方もあるでしょう。
あんたみたいな人間が居るから雨も降り続けるんだ。
文句を言っても傘を指して待つんでしょう。
雨が上がったら雨の事なんて忘れてしまいますよ。
ほら、止みましたよ。
[通り雨]