ころ

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8/1/2023, 3:02:10 PM

仕事を辞めてから随分と自堕落な生活を送っている。テーブルや床を埋め尽くす服とゴミ、いつ開けたかも覚えていない閉め切られたカーテン、嫌に湿っている空気。もう逆に笑えてくるほどにブラックな会社を逃げるように辞めるので気力を使い果たしてしまった。次の仕事も決めずに強行したので焦る気持ちも無いわけではないが、今はとにかく何もしたくないのだ。

しかし、1日何もせずとも腹は減るしトイレにも行きたくなる。歩き出してすぐに足元にあったペットボトルを踏んで思い切り転んだ。幸いにも服の山のおかげで怪我をせずに済んだのだが、何をやってるんだ……と強烈に自分が情けなくなり涙を流した。気が済むまで泣くと今度は怒りが込み上げてきた。なぜこんな目に遭うのか、自分が何をしたというのだ。とまぁつい先ほど転んだのは自分のせいなので少し逆ギレの要素も入ってはいるのは自覚している。

起き上がってふとテーブルに目をやるとコンビニやスーパーで買った弁当や惣菜のトレイが山積みになっている光景が目に入った。余りにもきつい仕事に心身共に疲弊しきっていたので自炊はおろか外食にすら行く気力もなかった。これだけ頑張ったのだ、自分へのご褒美に美味い物を食べてもバチは当たらないはず。そう思うとずっとどん底にあった気分が少しずつ明るくなってきているのが分かった。そうと決まれば!と立ち上がろうとしたその時、外で雷の音がけたたましく鳴り響いた。そういえば今日は豪雨だった……。せっかく上向きになっていた気分が少し沈む。まぁでも美味しいものはそうすぐには逃げたりしない。もし、明日もし晴れたら高い焼肉を食べにいこう。寿司でも良い。部屋の片付けも仕事探しもその後でだってどうとでもなる。久しぶりに高揚する気持ちを抑え、早めに明日を迎えるために再び布団に潜り込んだ。

7/31/2023, 4:17:08 PM

最愛の人が死んでしまってから10年が経った。当時に比べればいくらか悲しみは癒えたものの、それでもやはり生き返ってそばに居てくれたらとふと思う時はある。たまに夢に出てきてもくれるが目覚めた時の喪失感にだけはいつまでも慣れる事ができずにいた。
周りからはそろそろ前を向いてはどうかと言われることが増えた。新しい相手を探せということだろう。しかしながら私は別にずっと悲しみに暮れているわけではないし、自分では前向きだと思ってる。決して長くはなかった彼との結婚生活はとても幸せだった。満たされていた。別に操を立てているわけでもないのだが、ただなんとなくこれでいいなと思ってしまった。あの暖かな記憶を支えにずっと生きていこうと思った。だから別の人は必要ない。私1人だけのものになってしまったこの記憶になんだか不純物が混ざるような気がするのだ。だから、1人でいたい。1人で構わない。