ころ

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最愛の人が死んでしまってから10年が経った。当時に比べればいくらか悲しみは癒えたものの、それでもやはり生き返ってそばに居てくれたらとふと思う時はある。たまに夢に出てきてもくれるが目覚めた時の喪失感にだけはいつまでも慣れる事ができずにいた。
周りからはそろそろ前を向いてはどうかと言われることが増えた。新しい相手を探せということだろう。しかしながら私は別にずっと悲しみに暮れているわけではないし、自分では前向きだと思ってる。決して長くはなかった彼との結婚生活はとても幸せだった。満たされていた。別に操を立てているわけでもないのだが、ただなんとなくこれでいいなと思ってしまった。あの暖かな記憶を支えにずっと生きていこうと思った。だから別の人は必要ない。私1人だけのものになってしまったこの記憶になんだか不純物が混ざるような気がするのだ。だから、1人でいたい。1人で構わない。

7/31/2023, 4:17:08 PM