「これからも、ずっと・・・」
その後の言葉が、ザーザーとノイズのように聞こえ、かき消されてしまった。
あぁ、まただ。また、同じ夢だ。
夢から醒めると、そこには天井がある。うん。当たり前だ。
当たり前で、見馴れた俺の部屋だ。
覚醒していく意識の中で、ここが自分の部屋だと認識した。
この夢に出てくる女性は、髪が長く整った顔をした人だった。
もちろん、そんな知り合いはいない。
そんなきれいな人が知り合いにいれば、間違いなく覚えている。
では、この女性は誰なんだ?
まぁ、初戦は夢なので大した意味はないのだろうけど…。
その1年後、俺の兄が結婚相手を連れてきた。
ちなみに俺は、高校生2年生だ。
おわかりいただけただろうか?
そう、その女性は夢の中の女性だった。
つまり、夢の中で俺は兄の目線で結婚相手を見ていたのだ。
それを知った時、壊れたラジオのように何度も何度もその言葉が再生された。
「これからのずっと一緒にいようね。ゆうちゃん!」
今度は最後まで聞き取れた。
…兄さんのこと、ゆうちゃんって呼ぶんだな。
ぼんやりと、どうでもいいことが思い浮かんだことを今でも鮮明に覚えている。
星空の下で体育座りをする。
すると、自分がどれほどちっぽけな存在なんだろうと感じることがある。
嫌な事があっても、満天の星空を眺めているといつの間にかすっぽりと忘れている。
星ってすごい。
体育座りをしなくてもいい。立ち尽くすだけでいい。
星だけではない。蟲の声、生暖かい風など、聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚の五感。
それらを意識する。
すると、あら不思議。
独りぼっちじゃなくなった。
「それでいい」
その言葉を聞いて私はふと、違和感を覚えた。
別におかしくはない、日常会話でもよく聞くありふれた言葉なのに。
何故だろう?
その時ふと、もう一つの言葉が私の脳裏に浮かんだ。
「それがいい」
その言葉が思い浮かんだとき、"これだ"と思った。
「それでいい」は、妥協されているようだが、「それがいい」となれば、その一つを追求する。代わりのものがない。
そういう、ポジティブな考えになれるから。
だから私は、「それがいい」